大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
566 / 2,022
本編

結界と右腕

しおりを挟む
『はぁん?お前さん、どうやってアレを矯正する気だ?』
『さぁ?とりあえず殴ってみようか』
『変わらねぇじゃねぇか…』
『違ぇよ馬鹿。見てみろよ。あの結界を張ってから、フライナの様子が変だろ』
『…ん?』
そうなのだ。
さっきまで気にもしていなかったのだが、よく見るとフライナは頭を抱えてしゃがみこんでいる。しかも、遠目に見ても震えているようにも見えた。
『…原因は何だ?結界か?』
『じゃねぇの?とりあえず、こんなにも静かな所で、こんなにもデカい独り言をしててもあの反応は流石に変だ。音とかも一切遮断してるのかもしれねぇな…っつー訳で、アレを全力で叩き割る所からスタートだ』
『血界は使うのか?第三血界なら…』
『いや、使わねぇ。それどころか銀剣も金剣もナシだ』
『…割れるか?』
『逆にそれしかねぇだろよ』
金剣、銀剣で結界を叩き斬った場合、勢い余ってフライナをザックリ、なんてやったら目も当てられない。
結界とフライナ本人との間は鼻先一センチ程。
うっすら見える結界は、ピタリと張り付くようにして張られているため、失敗すれば目も当てられない。
血界も同様の理由で却下。
それに、おそらく結界を破った直後に、こちらに気づくだろうが、その時に血界を使っていれば、言い訳が出来ない。
多分、《聖女》の中には《勇者》という存在がある程度知られている。
根拠は俺達《勇者》が、最初から《聖女》という存在についてある程度知っているからだ。
そして、あの聖女サマが俺と言う勇者を知ったらどうなるか。
そのまま教会の傘下に入れられる、なんて話になりそうだ。
で、そのまま《聖女》と並べて《勇者》が教会の名の元に擁立させる……。
それは俺が望む事じゃない。
そもそも、教会という組織が俺はあまり好きじゃないからな。
『そういう訳で、スキルと戦技アーツのみで戦う。鎧は…ギリセーフかな?手応え的に』
多少の怪我をしても、聖女サマが即死するほどの威力は無い。
それに、俺の身体というもの程精密かつ正確な作業を出来るものも他にあるまい。
『本当にか?あの杭打機パイルバンカーは即死させられるだろ。それに、それすら防がれたんだ。少なくとも、それ以上の威力を持った攻撃を、叩き込まなきゃならんはずだぜ?』
『こういう時は、思考を変えるんだ』
『ほう?』
ゆっくりと歩いていき、フライナの目の前に立つ。
やはりカタカタと震えており、明らかに尋常では無さそうだ。
『──変形』
想起するのは無数の針。
それを腕にひとまわり、ふたまわり、さらにまだ巻き付けるようにして髪を纏い、その上から鎧を装着。
装甲のほとんどが剥がれ、右腕に集中する。
視界も左半分が開け、よく見渡せるようになった。
もっとも、よく見渡せても目の前には一人の少女しかいないのだが。
「一撃必殺じゃなくて、千撃不殺を狙う」
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

種族統合 ~宝玉編~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:481

まほカン

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:32

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:94

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:666

処理中です...