大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

炎と障壁

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装填した《聖弾》は、超高威力の刃の形をした魔法。それに空中都市の魔法を上乗せして放った。
良くて相殺、最悪減衰。もしそうなった場合は俺も消し飛ぶ。そう思って放った《聖弾》は。
何もかもを無視し、光の魔法をまるで無かったかのように消した。
『「!?」』「なん…!?」
驚きの声を上げる俺と《勇者》。そしてこの場で最も早く行動を起こしたのは、俺達でも魔族達でもなく、ただのヒト。
「貫きなさいっ!!」
直後、落下する俺の真横を、目にも止まらぬ早さで熱を持った何かが通り過ぎて行った。
「熱っ」
思わずそう言って、飛んで行ったそれを見上げると、美しい炎の尾をなびかせて、一羽の鳥が一直線に空へと駆け上っていくのが見えた。
「あれが…」
そう呟いて着地。
「何考えてるんですの!?」
「え、いやだって、お前と魔法を守るならこれしかなかったし」
「俺は勘定に入ってないんだな」
「お前はほっといても死なねぇだろ」
「怪我は!?どこか感覚がないところとかないんですの!?」
「落ち着け。特にねぇよ。少し肌が焼けたぐらいで──おっと?」
空気が揺れた。
上を見上げると、空中都市の障壁に炎の鳥が当たったようだ。
黒く空を覆う空中都市の影に、赤々と照らす炎の鳥が食らいついた。
「…行けるのか?」
「正直な所を言えば、五分五分ですわね。正確な距離も分からないし、障壁の強度もどのぐらいか分からない。ましてや相手は魔族、その技術の粋ともなれば、どれだけ不確定要素を入れても足りませんわ。けれど」
そこで一度、空気が大きく揺れた。
炎の鳥の姿が崩れ、炎の欠片へと崩れていく。
「あそこまで命を張られて、私が何の成果も挙げられない。そんなお粗末な結果には絶対させませんわよ」
砕け散った炎の鳥、その破片が消えること無く空中に留まっている。
それらの炎が空中で膨れ上がり、緋眼を使わずとも目視できるサイズになると、一斉に障壁へと再突撃を仕掛けた。
『──ん』
「どうした」
『ヒビが入った。障壁に』
そういった直後、炎が障壁を貫いた。
「行った!」
しかしアーネの魔法もそこで力尽きたらしく、姿を炎弾へと変え、回転しながら直進し──再び障壁にぶつかった。
「二重障壁…!?」
「そんなことだろうと思ってましたわ。けれど普通に考えて、あの高度にあるのなら、一番最初の障壁しか使われない。なら一番外側の障壁を一番高出力にして、二枚目以降は一枚目に不具合が起きた時の緊急用か、一枚目が抜かれた時に威力を少しでも分散させるための、言わば最後の悪あがきでしょうね」
そこでアーネは一度言葉を切り、「で、」と言って口を再び開いた。
「障壁はあと何枚ありますの?」
炎弾が力を失い、その場で姿を変える。
白炎を纏った竜の顎が直に障壁に喰らいつき、ミシミシと言う音がここまで聞こえさせる。
「魔法は残り五つ。加えて輪廻術式は後半の魔法の方が強化が強くかかりますわよ」
竜の顎が障壁を噛み砕き、姿を変えて火柱に。
真っ直ぐ伸びた火柱は遂に空中都市にダメージを与え──いや、寸前でもう一枚障壁。
「硬すぎんだろ…!」
「けれど、これでおしまいですわ」
火柱が消え、炎の蔦が空中に絡む。障壁に触れた瞬間に蔦は一気に広がり、空中都市全てを覆うように広がる。しかしそれでも障壁はまだ砕けない。
蔦が消える寸前、それはさらに姿を変えて無数の炎の槍となって障壁に突立つ。
「行けッ…!」
ビキッ、と。
遂に最後の障壁にヒビが入った。
槍がさらに障壁に食い込み、ヒビを広げ、そしてそこで力尽きた。
更に槍が姿を変えたのは──鳥。
サイズは最初の鳥と比べてずっと小さく、不完全という言葉が浮かぶほど。
だが中に内包している魔力量は、今までの炎を貰い続けた影響か、莫大な力を秘めていた。
その鳥が障壁に触れた瞬間、凄まじい爆発を起こし、僅かに残っていた障壁を消し飛ばす。
「うおっ」
遅れて強めの風が舞い上がり、思わず目を細める。
そして今ので八つ目の魔法。
最後の魔法は何の変哲もない、ただの炎球の魔法。
ただの炎球と違うことがあるとすれば、飛び散った鳥の破片それぞれが無数の炎となり、大きな空中都市が見えないほど辺りに散りばめられているという事だろうか。
「喰らいなさいな!!」
それが合図だったのか、アーネの魔法が一度に炸裂した。
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