大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,738 / 2,022
本編

魔法陣と攻防

しおりを挟む
「──起動!」「──超覚」
血界の発動と同時にキィン、と言う音を響かせて空中都市からの攻撃が着弾した。
都市の攻撃は恐ろしく正確に魔法陣を貫いており、弾速も異様に早い。
だが緋眼なら見切れる。
《勇者》が血鎖を下からぶつけ、後ろに流す。真っ直ぐ飛んできていた光のような魔法はあっさりと進路を逸らされ、俺たちの遥か後方に吹き飛び、爆発を引き起こす。
「おお怖い怖い。あんなの当たりゃ肉片すら残りゃしねぇ」
「当たればな。行けるか?お兄ちゃん」
「その呼称やめろ。せめて名前で呼べ……デカいのは任せた」
直後、空中都市が数箇所──いや、数十箇所光った。
キィン、キィン、キィンと耳が痛くなるような音を連続して光がこちらへ飛んでくる。
ただし手数に寄ったからか、一発一発の威力はさほどでもなく、光も小さい。
「うっはは、こりゃ成程。発案者も諦めるわな」
そう言いながら、血呪と血鎧の同時発動をさせつつ金剣と拳で全ての光を弾いていく。
そして時折飛んでくる太い光のみ、《勇者》が後ろから的確に血鎖で弾いていく。
「大丈夫ですの!?」
「俺の心配より自分の心配しろ、アーネ。準備はいいのか?」
「なんとか完成しましたわ。あとは距離ですわね…」
上空二千メートル。最低でもそれだけの高度があるという事は、少なくとも二千メートルは魔法を飛ばす必要があると言うこと。
それも横ではなく上。重力に真正面から喧嘩を売りつつ、それだけの距離を飛ばす必要があるのだ。出来る限り真下で撃たなくては細い勝機がさらに細くなる。
だがそれは、空中都市の攻撃が最も厚くなる地点での攻防をも意味する。
『あの調子で進んでるなら…もう三十秒って所か』
「三十秒!用意しとけよアーネ!」
攻撃は当然苛烈に。空中都市がほぼ上まで来ているので、上からの攻撃も魔法陣を守りつつ行う。
流石にここまで来ると《勇者》もただ血鎖だけで対応するのは限界と判断したらしく、俺と同様に補助系の血界を使って直に攻撃を叩き落としにかかる。
「どうだ!?」
『もう少し…もう少しだけ堪えろ』
シャルがそう言った瞬間、ピタリと光が止まった。
「なんだ…?」
「アーネ、行けるか!?」
「行けますわ!」
『「いや待てッ!!」』
シャルと《勇者》が同時に吼えた。
言われて気づく。
真上の空中都市が、こちらの魔法陣以上の魔力を集めている事を。
「!?」
『ここら一帯消し飛ばすつもりか!!』
いくらアーネの魔法と言えど、あんな魔法とぶつかればタダでは済まない。仮に輪廻術式とやらが打ち勝ったとしても、確実に空中都市へダメージを与えることは出来ないし、もう一度術式を起こす力も時間も無い。
「っ、撃ちま──」
「《勇者》!アーネと魔法陣を全力で守れ!!」
そう言ったと同時に、俺はマキナを解除して即席の足場を空中に生成。高速で登って再びマキナを装備し直す。
「第一、第四血界並列起動、そして──名無き者の後継者が《理》を持って命ずる」
金剣の能力を解放し、周りに浮かんだ四つの魔法のうち三種の魔法を剣に装填──いや、それだけじゃ足りない。
あんな魔法に、常識の範疇で打ち勝つなんて事が出来る訳が無い。
「っ、入りッ!やがれぇぇぇぇぇぇ!!」
金剣が限界だと言わんばかりに金属質な悲鳴を上げるが、それでも四種の魔法を強引にねじ込む。
だが。
金剣に四種の魔法が入ったかどうか、確認するより先に光が落ちた。
魔法返しはあっさりと貫かれ、血鎖は僅かに堪えた後掻き消える。そしてマキナと血鎧に包まれた身体が限界を超える寸前、血鎧のカウンターを解放して、金剣に乗せて放つ。
「ぶち抜け!《聖弾》ッッッ!!」
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

種族統合 ~宝玉編~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:481

まほカン

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:32

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:94

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:666

処理中です...