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本編
早朝と特訓
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昨日はあの後、いくらか得物を持たせて振らせてみたが、重量的にもリーチ的にも問題はなさそうだった。
さて、そして今現在、一晩あけて朝六時。
いつもなら俺の起床時間はもっと後なので、少しばかり眠い。
欠伸を噛み殺しつつ、聖女サマのアップをやや恨めしげに眺める。
なぜ朝の早い時間にこんな事をやっているのかと言うと、どこぞの誰かさんが非常に元気で、五時頃に俺達の部屋をノックして起こしに来たから。
…そのせいで俺は起こされ、シエルも叩き起された。
ちなみにシエルは今、「………ねむい」と言いながら俺に抱っこされて頭を俺の胸に擦り付けている。
…しかし。
『…動き、全然違ぇな』
「…ホントに」
「………?」
「あぁ、シエルは気にすんな。寝てていいぞ」
「………ん」
聖女サマの身体が非常によく動いている。
なんと言うか…別人が中に入っているようなレベルで。
しかも、昨日はあんなに急に動いたのだから、筋肉痛とかになってそうなんだが、その様子もなさそうだ。
『…筋肉痛程度は魔法で何とかしたとしても…動きは何があったんだ?』
「…聞いてみるか」
「終わりました!」
丁度いいタイミングで聖女サマがアップを終え、こちらに小走りに向かってくる。
「お疲れさん。筋肉痛とかは魔法で何とかしたのか?あと、動きがダンチなんだが、何かあったか?」
「えぇ、筋肉痛は治しましたけど…ほかは特に何もしていませんね。今日は動いてもどこも痛くないんです!」
ふぅん?昨日は痛かったって事?何故それを言わなかったと思うが、まぁ過ぎたことは仕方ない。軽く言い含めて終わる。
聖女サマは一応、朝食の用意が出来るまでの間に少しでもやりたい、との事で俺を引っ張り出したので、あと一時間程度でひとまず終了となる。
「次は何をするんですか?」
「ふーん…聖女サマって俺の出身とかって知ってたよな?」
「もちろん知ってますよ」
まぁ、初めてあった時の話がアレだったしな…。
『ん?何のことだ?』
お前は知らんでいい。
「んじゃ、家族の事も覚えてるよな?」
「はい。七騎…ナナキの事ですね?」
ニュアンスの違いで若干顔を顰めると、聖女サマは即座に言い直した。
「…まぁ。それで、ナナキは基本的に、俺に特訓を架しても自分から組手とか、模擬戦とか、絶対にやらなかったんだよ」
「はぁ」
何が言いたいの?って顔の聖女サマ。
「まぁまぁ、最後まで聞け。ナナキの信条か何か知らんが、『戦ったのなら、トドメを刺すまでが戦い』みたいな物があったらしくて、その手の練習は絶対にしなかったんだよ。……たった一回を除いてな」
シエルをそっと下に下ろし、肩をぐるぐると回す。
腰を少し落とし、明らかに戦闘態勢と分かる構えを取り、聖女サマをまっすぐ見る。
「あ、あの…何を…」
「ナナキの特訓シリーズ──まぁ、シリーズっつっても大した数はねぇんだけど──で、最初の最初、武器を握るより前に一度だけ、ナナキと手合わせしたんだよ。ルールは簡単。ただひたすら、延々と、ボコられ続けろ。本気を出しはしないが──手を抜きはしない。死ぬなよ?」
さて、そして今現在、一晩あけて朝六時。
いつもなら俺の起床時間はもっと後なので、少しばかり眠い。
欠伸を噛み殺しつつ、聖女サマのアップをやや恨めしげに眺める。
なぜ朝の早い時間にこんな事をやっているのかと言うと、どこぞの誰かさんが非常に元気で、五時頃に俺達の部屋をノックして起こしに来たから。
…そのせいで俺は起こされ、シエルも叩き起された。
ちなみにシエルは今、「………ねむい」と言いながら俺に抱っこされて頭を俺の胸に擦り付けている。
…しかし。
『…動き、全然違ぇな』
「…ホントに」
「………?」
「あぁ、シエルは気にすんな。寝てていいぞ」
「………ん」
聖女サマの身体が非常によく動いている。
なんと言うか…別人が中に入っているようなレベルで。
しかも、昨日はあんなに急に動いたのだから、筋肉痛とかになってそうなんだが、その様子もなさそうだ。
『…筋肉痛程度は魔法で何とかしたとしても…動きは何があったんだ?』
「…聞いてみるか」
「終わりました!」
丁度いいタイミングで聖女サマがアップを終え、こちらに小走りに向かってくる。
「お疲れさん。筋肉痛とかは魔法で何とかしたのか?あと、動きがダンチなんだが、何かあったか?」
「えぇ、筋肉痛は治しましたけど…ほかは特に何もしていませんね。今日は動いてもどこも痛くないんです!」
ふぅん?昨日は痛かったって事?何故それを言わなかったと思うが、まぁ過ぎたことは仕方ない。軽く言い含めて終わる。
聖女サマは一応、朝食の用意が出来るまでの間に少しでもやりたい、との事で俺を引っ張り出したので、あと一時間程度でひとまず終了となる。
「次は何をするんですか?」
「ふーん…聖女サマって俺の出身とかって知ってたよな?」
「もちろん知ってますよ」
まぁ、初めてあった時の話がアレだったしな…。
『ん?何のことだ?』
お前は知らんでいい。
「んじゃ、家族の事も覚えてるよな?」
「はい。七騎…ナナキの事ですね?」
ニュアンスの違いで若干顔を顰めると、聖女サマは即座に言い直した。
「…まぁ。それで、ナナキは基本的に、俺に特訓を架しても自分から組手とか、模擬戦とか、絶対にやらなかったんだよ」
「はぁ」
何が言いたいの?って顔の聖女サマ。
「まぁまぁ、最後まで聞け。ナナキの信条か何か知らんが、『戦ったのなら、トドメを刺すまでが戦い』みたいな物があったらしくて、その手の練習は絶対にしなかったんだよ。……たった一回を除いてな」
シエルをそっと下に下ろし、肩をぐるぐると回す。
腰を少し落とし、明らかに戦闘態勢と分かる構えを取り、聖女サマをまっすぐ見る。
「あ、あの…何を…」
「ナナキの特訓シリーズ──まぁ、シリーズっつっても大した数はねぇんだけど──で、最初の最初、武器を握るより前に一度だけ、ナナキと手合わせしたんだよ。ルールは簡単。ただひたすら、延々と、ボコられ続けろ。本気を出しはしないが──手を抜きはしない。死ぬなよ?」
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