大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

聖女サマと得物

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聖女サマを着替えさせ、とりあえずいくらか身体を動かせた結果、聖女サマの運動神経が悪い訳では無いらしいということがわかった。
そりゃそうか。たしか、聖女サマって農家かなんかの出だったよな。
だが、スタミナがない。すぐ息切れを起こす。
多分、教会での聖女になるための修練(?)とかでは全く運動をせず、その後も特に動かすことがなかったから鈍ったのだろう。
『…でも、普通に祭りを歩き回ってたから、足腰は強いんじゃね?』
…そんなアンバランスな事、有り得るかね?
息を整え、休んでいる聖女サマに一応聞いてみた。
「なぁ、この間の星祭りじゃ結構歩き回ってたけど、疲れなかったのか?」
「はぁ、はぁ、はぁ…はい?…えぇはい、回復魔法…ではない、のですが、それの、応用で…」
「あぁうん、半分ぐらい察したから、呼吸整えてろ」
つまりは魔法で騙してたって事…だろうな。便利な事で。
しかし、回復魔法じゃ本人の傷とかは直せないと思ってたんだが…どうなんだろうか。
「………よし、充分休んだな。次行くぞ、次」
一瞬「え、マジ?」みたいな顔した聖女サマは、しかしすぐに表情を引き締めて「宜しくお願いします!」と返してきた。体力はないが、根性は一流だな。
「んじゃ、武器は多分…これでいいか」
ヒョイと放り投げたのは、シエルが持っている大振りのナイフよりもさらに一回りほど大きいナイフ。
それを聖女サマは咄嗟に回避。
ナイフは聖女サマの足元に落ちる。
「あ、危ないじゃないですか!!」
「まぁ抜き身だしな。けど大丈夫だよ。元々、刃引きしてある」
「はびき…?」
「要はそれじゃモノは斬れねぇんだよ。ナイフの形をした鈍器だ」
「それじゃあ敵を倒せないじゃないですか!」
「阿呆」
落ちたナイフを拾いながら言う。
「敵と戦ってもいいが、敵を倒すことは許さん。これは絶対だ」
「な、何故ですか!」
「…わかってるのか?倒すってことは──殺す、って事だぞ?」
「わかってます!」
「………本当に?」
ナイフを拾うために近づいたため、聖女サマとの距離も必然的に詰められる。
零距離で聖女サマの目を覗き込むと、その目にはやはり信念と決意。
…まだ、汚れちゃいないな。
「…まぁいいや。そのうち分かるだろ。今言っとくとしたら…傷つけるってことは殺すことで、殺すってことは、だ」
「もちろんわかってますとも」
絶対に分かっていない聖女サマがそう言う。
「明日、俺がいた所でやった練習を教えてやるよ。今日は…体力作りと、慣らしだな。それをひたすらやるか」
それに不満そうな聖女サマを無視し、ランニングなどを軽くさせる。
さて、あと四日…か。
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