大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

教会と陰

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今回は昨晩と違い、急ぎの用では無かったので人混みを避けながら歩き、二十分ほどで教会が見えてきた。
「そういや」
「はい?どうかしましたか?」
教会に見た感じ、異変はなさそうだと確認しながら近づいて行き、ふと思い出したことを聖女サマに聞いてみる。
「教会の中にいた奴らはどうしたんだ?」
さっきの会話で、なんとなく治療したらしいって事はわかったが、まさかあそこにずっと転がしておいたわけじゃあるまい。
聖女サマ本人にはほとんど戦闘能力がないので、万が一治療の際に相手が襲いかかってくる可能性もある。そうなると、聖女サマがまた普通に捕まるし。
「あぁ…昨晩、アーネさんとここに戻って来た際、二人で手分けしてその場で回復させました。途中で起きかけた人はアーネさんが軽く気絶させたりして、そのまま放置してきましたよ」
そのまさかでしたか。
「あら、何の話ですの?」
「何、大したことじゃない」
後ろからアーネが声をかけてきたが、首をひねってそう伝えると「ならいいか」みたいな感じで気にもしていなかった。
「俺は下に行くけど、お前らはどうするよ?」
「行きます」「行きますわ」
「………した?」
「あぁ、シエルは知らないか…」
さっきあの場にいたけど、ほとんど理解は出来なかったらしいシエルに説明をすると、途端に嫌な顔をした。
一瞬、どうしたのかと思ったが理由はすぐに思い当たった。
「『あー…』」「…なるほどですの」
「ど、どうかしたんですか?」
ほかの二人も分かったらしいが、聖女サマだけがわかっていない。当然だが。
さて、どうソフトに言葉を選んだものか。
少し考えた末、こう答えた。
「この子な?ちょっと前まで監禁されててな…」
『全然ソフトになってねぇ!!』
シャルのツッコミが俺の頭の中で炸裂するが、悲しいかな。俺以外誰にも聞こえていない。
「ちょっとちょっと!ストレート過ぎますわよ!」
「仕方ねぇだろ?事実なんだから」
「にしてももう少しオブラートに包んで…!」
「か、監禁ですか…?まさか、それはあなたが?」
「ンなわけねぇだろ。そもそも、俺とシエルは血が繋がってねぇから。…ん?この事言ってたよな?」
『言ってねぇな』「言ってないと思いますわ」「言ってませんね」「………しら、ない」
全否定されたのなら疑いようもないな。
「まぁ、簡単に言えば前の親がクズ過ぎて、俺がこの子をさらっ…連れ出して、今に至るわけだ」
「今、攫ったと…」
「言ってない言ってない。そもそも、攫ったならシエルも全力で嫌がるだろ」
「それもそうですね…」
「で、まぁその監禁してた場所が地下の光が一筋たりとも差さないような所だったから、嫌がってるんだと思う」
だよな?と聞くと、小さくシエルが頷く。
「どうする?待っとくか?」
「………いや」
シエルは、ふるふるとちいさく首を横に振る。
「せめて暗くなけりゃいいんだろうが…アーネ、頼めるか?」
「わかりましたわ」
アーネが二言、三言呟くと、大きな火の玉が…。
「…デカくね?」
俺の身長ぐらいあるんですが。
「これを大元として、さらに砕いて使いますの。そっちの方が魔力効率がいいんですのよ」
「へぇ。まぁ、これなら大丈夫…か?」
聞いてみると、ちいさくシエルが頷いた。よかったよかった。それなら。
「行きますか」
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