大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

不満と外出

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そんな訳で、短いようで長かった聖学祭が終わった。
少々気になっていた《雷光》対《白虎》の試合は戦闘時間七秒。詰めた《白虎を》軽くいなし、まともに触れることすら許させず《雷光》による《雷刀一閃》により幕となったらしい。
汗ひとつ流さずに《雷光》は勝利を収め、治療で寝ていたユーリア、検査の真っ只中にいた俺の代わりに勝利後のインタビューに出てさっさと宿に戻ったそうだ。
前座となるエキシビジョンマッチでは相当に酷い試合となったが、本戦の試合はほぼ全て聖学が勝ちを納めたようなもの。
全てが満足行ったかどうかと言われれば否定する場面もある。だが総合的な評価を下すなら充分合格だろう。
「だからそう落ち込むなって。お前は充分やったって」
「しかしだなぁレィア…」
と凹むユーリア。
聖学祭が終わり、学校に戻ってしばらくしてもユーリアはずっとこんな感じ。カメレオンとの一戦…と言うよりも、その後のクロコダイル戦の事が余程堪えたらしい。
「あの場には父もいたし兄もいた。そんな中で一戦目を華々しく…とは言い難いが、私らしく乗り切ってさぁ二戦目となった所であの醜態だぞ。思わず口をついた悪態も全部聞かれた…」
「そういうこともあるさ。というか、純粋にクロコダイルのスキルは戦ってみないと面倒なところが分からないから、傍から見ると変に見えるのは仕方ないと思うぞ」
ちなみにユーリアだが、痛みで動きが止まった瞬間、クロコダイルが投げた握り拳程度の鉄片が彼女の魔法で爆発、そのまま場外で痛みに呻いているうちに場外負けとなったらしい。
「クソ…そう言えばレィア、君はどうやってクロコダイルを倒したんだ?」
「あ?俺?普通に戦ってたらクロコダイルが降参した」
「彼女のスキルはどうしたんだ?」
「そのまま無視して戦ってた」
「…どうしたらそういう思考に行き着くんだ…?」
「育った環境…かもなぁ…」
『お前の場合はそもそも厳密には種族が違うからな…当然、根本的に思考もある程度ヒトとは違うぞ』
それは知ってる。まぁ言わないし、シャルの声もユーリアには聞こえていないので、彼女が食いつくのは必然的に俺のセリフになる。
「育った環境…そう言えばレィアの故郷は紅の森だとか言っていたな」
「あぁ。来たこと無かったっけ?」
「無いな。それにあそこは父からも行くなと言われている場所だ」
「ふーん。そんな危険な場所じゃねぇんだが…あぁいや、嘘ついた。一日一回以上魔獣が結界抜けてこっち入ってくるわ」
「…相当な危険地帯だぞ。外の魔獣が来るなんて」
「まぁでも、明後日ぐらいに家に帰るんだがな」
「何!?何故だ!?まさか聖学を辞めるのか!?」
「どうした急に。別に大した理由じゃねぇよ」
数日前、学校長から依頼があったのだ。
内容は紅の森の調査。先日の結界破りの件で東側の結界は破られていなかったという報告があったが、念の為調査してきて欲しいとの事。
「あなたも身内がどうなっているか確認したくはありませんか?」
俺としては丁度またヤツキに会っておきたかったのでこれを二つ返事で承諾。アーネにその事を伝えると、自分も行きたかったのに置いてけぼりになるのかと少し拗ねていた。
とまぁ、そういう事があったとユーリアに伝えると、彼女は少し考えたあと、「よし分かった」と言って立ち上がった。
「どうした、何がだ?」
「少し学校長に直談判してくる」
「は?」
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