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本編
豹と密談
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「………。」
ぱちり、と。
目を覚ました。
時刻はきっかり午前の三時。日が昇る前、薄暗いこの時間に目覚めるように身体のタイマーをセットしたのだから間違いない。
俺を抱きしめるようにして寝ているアーネを起こさないよう、細心の注意を払って抜け出し、音を立てずに着替えて部屋を静かに出る。
初日に寄越された手紙。それに書かれた場所は王都の外れにある廃屋。そこへ向かい、まだ誰も来ていないことを確認してそっと座り込む。
『痛むか?』
「全然。大丈夫だ」
指定された時間は四時きっかり。少し時間があるか。
そう思って欠伸をしたところで誰かの気配。
「随分と早いお着きねぇ。《緋眼騎士》」
「そっちこそ。あと三十分はあるぞ。《豹》」
かなり近くに来るまで気づけなかった。鈍ってんのか寝起きのせいか。気をつけなくてはな。
「一年、持たなかったわねぇ」
「…あぁ。あんな大口叩いた割にな」
去年。あの時も丁度聖学祭の終わり際、帰る日の朝方にこいつから分かりにくい呼び出しを受けたのを覚えている。
内容は半妖魔族であるシエル。いや、もっと言えばその中に眠る《魔王》について。
当時ロクにその存在について知らなかった俺以上に詳しく知り、じきにシエルの身体から《魔王》が蘇ると言った情報を寄越したのが彼女だった。
「彼女は今何処にぃ?」
「さぁな。どのぐらいこっちの話知ってる?」
「手紙に書いてあった事ぐらいよぉ。それも深くは知らない。ぜひ教えて欲しいわぁ」
「そうか。軽くしか知らねぇのか。じゃあまずはあいつの中の《魔王》が目覚め掛けた話からか」
そう言って、俺は魔族の襲撃があったことは伏せつつ、彼女が強引に中に眠っていた《魔王》が目覚めさせられた事や、自身の意思で結界から出て行った事を豹に伝えた。
「…思っていた以上に事態は深刻ねぇ。けど、聞いておいて今更だけど、こんなに私に話していいの?」
「構わん。お前なら情報の分別ぐらいつくだろ」
豹にどこまで話すかは相当シャルと話した。最終的な結論は、下手に隠すより全て話してしまった方がメリットは大きいと判断したが。
魔族の襲撃があった事も伝えても良かっただろうが、残念ながらこちらは制約だかなんだかで話せない。
だが、今回急遽行われた交流戦や、俺の発言を利用して、想像を促すことは出来る。
「ま、自分から出ていったって事は何かしらに感化されたのかね。半分は魔族だしな」
「………何かあったのね?」
「いいや、何も無いさ」
それで通じた。
「そう。そうなのねぇ…」
肩を竦め、わざとらしく視線を逸らす。すると彼女は意を決したように真剣な表情になる。
「《緋眼騎士》、あなたに頼みたいことがあるの」
「依頼か。西学からの依頼を受けるのは難しいだろうが…」
「大丈夫よぉ。あなたさえ承諾してくれれば、後で学校を通じて正式な依頼を出すから。あなたも聖学の学校長の許可を得て依頼を受ける形になると思うわぁ」
「…そうか。で、内容は?」
「聖学西学合同で例の彼女を魔族から奪い返す。あなたには是非それに参加して欲しいのよぉ」
ぱちり、と。
目を覚ました。
時刻はきっかり午前の三時。日が昇る前、薄暗いこの時間に目覚めるように身体のタイマーをセットしたのだから間違いない。
俺を抱きしめるようにして寝ているアーネを起こさないよう、細心の注意を払って抜け出し、音を立てずに着替えて部屋を静かに出る。
初日に寄越された手紙。それに書かれた場所は王都の外れにある廃屋。そこへ向かい、まだ誰も来ていないことを確認してそっと座り込む。
『痛むか?』
「全然。大丈夫だ」
指定された時間は四時きっかり。少し時間があるか。
そう思って欠伸をしたところで誰かの気配。
「随分と早いお着きねぇ。《緋眼騎士》」
「そっちこそ。あと三十分はあるぞ。《豹》」
かなり近くに来るまで気づけなかった。鈍ってんのか寝起きのせいか。気をつけなくてはな。
「一年、持たなかったわねぇ」
「…あぁ。あんな大口叩いた割にな」
去年。あの時も丁度聖学祭の終わり際、帰る日の朝方にこいつから分かりにくい呼び出しを受けたのを覚えている。
内容は半妖魔族であるシエル。いや、もっと言えばその中に眠る《魔王》について。
当時ロクにその存在について知らなかった俺以上に詳しく知り、じきにシエルの身体から《魔王》が蘇ると言った情報を寄越したのが彼女だった。
「彼女は今何処にぃ?」
「さぁな。どのぐらいこっちの話知ってる?」
「手紙に書いてあった事ぐらいよぉ。それも深くは知らない。ぜひ教えて欲しいわぁ」
「そうか。軽くしか知らねぇのか。じゃあまずはあいつの中の《魔王》が目覚め掛けた話からか」
そう言って、俺は魔族の襲撃があったことは伏せつつ、彼女が強引に中に眠っていた《魔王》が目覚めさせられた事や、自身の意思で結界から出て行った事を豹に伝えた。
「…思っていた以上に事態は深刻ねぇ。けど、聞いておいて今更だけど、こんなに私に話していいの?」
「構わん。お前なら情報の分別ぐらいつくだろ」
豹にどこまで話すかは相当シャルと話した。最終的な結論は、下手に隠すより全て話してしまった方がメリットは大きいと判断したが。
魔族の襲撃があった事も伝えても良かっただろうが、残念ながらこちらは制約だかなんだかで話せない。
だが、今回急遽行われた交流戦や、俺の発言を利用して、想像を促すことは出来る。
「ま、自分から出ていったって事は何かしらに感化されたのかね。半分は魔族だしな」
「………何かあったのね?」
「いいや、何も無いさ」
それで通じた。
「そう。そうなのねぇ…」
肩を竦め、わざとらしく視線を逸らす。すると彼女は意を決したように真剣な表情になる。
「《緋眼騎士》、あなたに頼みたいことがあるの」
「依頼か。西学からの依頼を受けるのは難しいだろうが…」
「大丈夫よぉ。あなたさえ承諾してくれれば、後で学校を通じて正式な依頼を出すから。あなたも聖学の学校長の許可を得て依頼を受ける形になると思うわぁ」
「…そうか。で、内容は?」
「聖学西学合同で例の彼女を魔族から奪い返す。あなたには是非それに参加して欲しいのよぉ」
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