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本編
治療と戦技
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『案外浅くてよかったな』
「浅かねぇよ馬鹿。致命的じゃねぇってだけだ」
『なら安いもんだ』
宿に戻り、天井を見上げてシャルとそう話す。
ちなみにアーネは風呂。俺は傷を縫ったばかりなのでパス。後で濡れタオルで身体拭いたりはするが。
治癒魔法を駆使して全治まで五日。今回俺が負った傷を見たアーネと、その相談に乗った癒し手のヒトが話し合った結果、そのぐらいの期間は必要らしい。
軽く身体開いて骨の位置直したり、焼かれた内臓がどうなってるのかチェックしたりでおよそ二時間ほどかかったが、どれも致命傷を避けた形になっていた上、そこまで深いダメージも見つからなかったらしい。
ただまぁ、雷撃ダメージは軽減のしようがなく、全体に広がっているので、ダメージの総量として見れば相当らしいが。
俺には珍しく、ベッドにずっと居て絶対安静ということも無いそうだ。と言っても無理は当然禁物だが、多少の運動も許されるとの事。
「君、回復系の魔法が効きが悪い体質だろ?そこまで深刻なヤツじゃないが。聖女紋付きの特別な薬出してやるから、あんまり回復魔法に頼らないようにしろよ」
診察や治療が一通り終わり、ベッドで一眠りした後、癒し手のヒトにそう言われて二種類ほど薬を渡された。
全部使い切れと何度も言われたが、何故あんなに念押しされたのか。確かに量はそこそこあるが。
それなりに起きて動けはするので、闘技場から病院へ搬送なんてコースにならなくて済んだ。余談ではあるが、さらに危篤と判断された場合、直接教会送りとなるらしい。そこで癒し手複数人掛りで治療すんのか、それとも聖女サマにでも診てもらうのかね。
『で、どうだった』
「何が」
『例の無形の戦技。なんか掴んだんじゃないのか?』
「………。」
しばしの沈黙。
『なんか言えよ』
二分程黙っていると、シャルがそうせっついてきた。
「いや、俺が思ってた戦技とまるで違ってたから。でも多分、あれがその入口なんだろうな」
シャルが言っているのは、明らかに先程の白虎との戦闘の事だろう。
ラスト十秒、俺が見せた異様にキレのいい動き。あれこそが恐らく俺の求めていた戦技の新しい極地。
だか、俺が想定していた戦技とはまるで違っていた。俺が思ってたのは、行動そのものの強化。
斬撃や蹴り、移動と言った全ての挙動が戦技のオーラを纏って強化される。平たく言えば、終わりの無い連撃系の戦技のような物を想像していた。
しかし実際は行動の強化ではなく、相手を見抜く看破の力と言えば良いのか。それが強化された。
そして何より、オーラも無ければ反動のような硬直もロクに無かった。あれはそもそも戦技と呼べるのか。
だがそれでいて断言出来るのもまた事実。あれは明らかに俺ではない何かの作用が働いていた。
何がどうなってあの戦技が出たのか。さっき軽くシャルと再現しようとしても上手くいかなかった。実際の肉体を動かす必要があるのか、あの時とは何かが違うのか。条件は分からないが、きっと俺が未熟なのだろう。
「遠いが届く。ここからでも」
孤高の最強とは違う、俺の強さなら。
その確信を得られただけでも良しとしよう。
「浅かねぇよ馬鹿。致命的じゃねぇってだけだ」
『なら安いもんだ』
宿に戻り、天井を見上げてシャルとそう話す。
ちなみにアーネは風呂。俺は傷を縫ったばかりなのでパス。後で濡れタオルで身体拭いたりはするが。
治癒魔法を駆使して全治まで五日。今回俺が負った傷を見たアーネと、その相談に乗った癒し手のヒトが話し合った結果、そのぐらいの期間は必要らしい。
軽く身体開いて骨の位置直したり、焼かれた内臓がどうなってるのかチェックしたりでおよそ二時間ほどかかったが、どれも致命傷を避けた形になっていた上、そこまで深いダメージも見つからなかったらしい。
ただまぁ、雷撃ダメージは軽減のしようがなく、全体に広がっているので、ダメージの総量として見れば相当らしいが。
俺には珍しく、ベッドにずっと居て絶対安静ということも無いそうだ。と言っても無理は当然禁物だが、多少の運動も許されるとの事。
「君、回復系の魔法が効きが悪い体質だろ?そこまで深刻なヤツじゃないが。聖女紋付きの特別な薬出してやるから、あんまり回復魔法に頼らないようにしろよ」
診察や治療が一通り終わり、ベッドで一眠りした後、癒し手のヒトにそう言われて二種類ほど薬を渡された。
全部使い切れと何度も言われたが、何故あんなに念押しされたのか。確かに量はそこそこあるが。
それなりに起きて動けはするので、闘技場から病院へ搬送なんてコースにならなくて済んだ。余談ではあるが、さらに危篤と判断された場合、直接教会送りとなるらしい。そこで癒し手複数人掛りで治療すんのか、それとも聖女サマにでも診てもらうのかね。
『で、どうだった』
「何が」
『例の無形の戦技。なんか掴んだんじゃないのか?』
「………。」
しばしの沈黙。
『なんか言えよ』
二分程黙っていると、シャルがそうせっついてきた。
「いや、俺が思ってた戦技とまるで違ってたから。でも多分、あれがその入口なんだろうな」
シャルが言っているのは、明らかに先程の白虎との戦闘の事だろう。
ラスト十秒、俺が見せた異様にキレのいい動き。あれこそが恐らく俺の求めていた戦技の新しい極地。
だか、俺が想定していた戦技とはまるで違っていた。俺が思ってたのは、行動そのものの強化。
斬撃や蹴り、移動と言った全ての挙動が戦技のオーラを纏って強化される。平たく言えば、終わりの無い連撃系の戦技のような物を想像していた。
しかし実際は行動の強化ではなく、相手を見抜く看破の力と言えば良いのか。それが強化された。
そして何より、オーラも無ければ反動のような硬直もロクに無かった。あれはそもそも戦技と呼べるのか。
だがそれでいて断言出来るのもまた事実。あれは明らかに俺ではない何かの作用が働いていた。
何がどうなってあの戦技が出たのか。さっき軽くシャルと再現しようとしても上手くいかなかった。実際の肉体を動かす必要があるのか、あの時とは何かが違うのか。条件は分からないが、きっと俺が未熟なのだろう。
「遠いが届く。ここからでも」
孤高の最強とは違う、俺の強さなら。
その確信を得られただけでも良しとしよう。
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