大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

右腕と聖女

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………。
最近、どうもこういう感じの事が多い気がする。
こういう感じの、ってのは戦闘の後に意識を失って、気づいたらベッドの上っての。
「…ん」
身じろぎしただけで背中の骨がバキバキと音を立てて鳴る。よっぽど長い事同じ体勢だったらしい。
身体を起こして周りを確認すると、どうやら俺の部屋じゃないらしい。
人もいないし、物もない。
せいぜい、ベッドの傍に台があり、その上にいつか見た銀のベルとサンドイッチが三つほど乗った皿があるだけ。
結構狭いその部屋につけられた一つだけの窓から射し込んでくる光は月の柔らかいそれではなく、太陽の輝かしい光。日付が変わっているのか。
とりあえず、腹が減っていたので皿の上のサンドイッチを手に取りつつ、身体をサッとチェック。
普通にくっついていた右腕に驚いたり、肺や骨に髪の毛が残っていなかった事に安堵しつつ、最後のサンドイッチを口に放り込み、仕上げに銀のベルを鳴らす。
十秒もしないうちにドタバタと複数人の足音が聞こえて来る。
「(ドンドバン!!)失礼しますわ!」
「……なぁアーネ…ノックって言葉の意味、知ってる?二回ドア叩いて返事を聞いてから入る事だぜ?間違ってもドアを二回殴りながらぶち破って入る事じゃねぇんだよ。本当に失礼な入り方になってんじゃねぇか」
「………おかあさん、だいじょうぶ?」
「うん?大丈夫大丈夫。ほれ、こっち来るか?抱っこしてやる」
「………ん!」
とてとてと走ってこっちへ来るシエルを俺の膝元へ乗せ、頭を撫でてやる。
それだけで嬉しそうにするシエルが可愛らしい。
「…体調は大丈夫ですの?」
「まぁ、ザッと見た感じは。今さっき起きたところだから何とも言えんが、特に痛む所もない。…何日寝てた?あと、聖女サマは?」
「一日…というか半日ですわよ。まさかもう起きるとは思ってもいませんでしたわ」
その言葉に逆に驚いた。
「うん?一日で治る怪我じゃねぇだろ?俺の回復力が足りねぇだろ」
「私の力じゃ足りませんわ。聖女サマの魔法ですわ」
聖女サマの魔法…。
「あぁ、復元魔法…」
以前話したと思うが、この魔法なら千切れたすら腕も生やす事が出来ない訳では無い。
俺の魔法返しでかなり威力は減衰するだろうが、元々が大魔法だ。強力な魔法は魔法返しのみでは相殺しきれない。
「流石に、万が一失敗したら不味いですので私の《圧縮》は使えませんでしたけど、腕を繋げる事ならギリギリ出来たようですわ」
「普通なら、繋げることすら出来ねぇだろうがな…」
切断面をチラリと見た感じ、歯で強引に押しつぶされていたから、かなりの労力だったろうに。
「んで、その聖女サマは?」
「アリスは…その、少しショックを受けてしまったらしいですの」
「…何?何か精神的ダメージを?あの肉塊を直視した事か?」
そう聞くと、アーネが弱々しく首を横にふる。本当に何があったんだ?
「その…あなたが男性だって事を、治療中に知って…」
………俺は軽く目眩を覚え、面倒になってそのまま寝た。
マジか。
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