大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

名持ちと激突9

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躱して弾いて防いで止めて。
クロコダイルの攻撃は確かに早いし厄介。
触れただけで起爆する魔法はガードも許されないし、彼女の身体に仕込まれた隠し武器は下手を打てば一撃で致命傷になる。
だが残念な事に。
彼女の攻撃力自体がそもそも俺の鎧を上回らない。
爆発も魔法であるが故に魔法返しを突破できない。
そしてマキナはダメージが蓄積しても即座に直す。
つまるところ、どう足掻いても俺にダメージが通らないのだ。
一方で攻撃から逃げる術は一級品らしく、俺の大剣をどれも辛うじてではあるが全て回避している。
受ければ骨か武器が折れるのは必至だろうから、その判断は正解。そしてそれをしつつ、反撃も出しているのは腐っても二つ名クラスということだろうか。
まぁ、残念ながらどれひとつとして俺に届かないのだが。
『そろそろ剣の慣らしも済んだろ。終わらせたらどうだ』
「…そうだな」
小さく呟いて、クロコダイルの棘付きハンマーを右手で弾き、そのまま顔に手を伸ばす。
「っ!」
一際早い反応を示し、クロコダイルがバックステップで回避しようとするが、バランスを崩してたたらを踏む。
「なん──」
彼女の足を止めたのは俺の髪。細くて絡まりやすく、そして決して千切れない。
「悪いな」
剣を左手に収納し、そのまま少し大きくした手のひらで、クロコダイルの顔をがっしりと掴んだ。
「痛っ、離しな」
「ふッ──!!」
そしてそのまま床に叩きつけ、意識を奪ってから蹴る。
真芯を蹴り抜いた感覚と共にクロコダイルがすっ飛び、場外の壁にぶち当たる。
「…やりすぎたか?」
『蹴る必要は無かったかもな。手応えは?』
「意識トんでんだ。避けようもない。今ので起きても痛みで悶絶してんじゃねぇかな」
カウントが三を数えたその時、意識がないはずのクロコダイルの身体が動いた。
「ああ?」
フィールドの上から場外まで数十メートル。この距離でも明確に動いたと認識できる程に明確な「行動」。
次の瞬間、彼女は持ち前の瞬発力を遺憾無く発揮し、フィールドに飛び戻った上、俺に反撃まで仕掛けて来た。
『意識奪ったんじゃねぇのかよ』
「驚いた。まさか意識が無くなっても襲いかかってくるとは」
彼女の意識は完全にない。だがそれも関係ないと言わんばかりに攻め立てるクロコダイル。意識が無いからか、かなり乱暴な攻め手となり、捨て身のような戦法となった。
いや、捨て身というより最早理性を失った獣だな。もしかして《クロコダイル》という名は、一度戦いを始めれば絶対に離さないとかそういう意味合いなのかもな。
などと一人で思いつつ、結論を一つ出す。
「折るか」
手足を折って物理的に動けなくしてしまえばいいだろう。髪で縛って場外に投げてもいいが、この勢いだと髪を無視して攻撃してきそうだ。
俺の髪は細く、そして決して切れない程頑丈。手足を縛った状態で無理に動かせば、最悪の場合手足が切り落とされる。
そうなるよりかは折った方が幾分いいだろう。
「ころ、す…ぜったい…!ころす…」
『なんか随分と恨まれてねぇかお前』
「いやいや、無意識に言ってんだから俺だけじゃなくて戦ってるやつ全体に言ってんだろ」
「れ…あ…しいる…ころす!」
『名指しだが?』
「何もした記憶ねぇどころか初対面だぞ俺。何ができるってんだ」
とはいえ、何故かやたらと恨まれている様子。もしかして原因は兄の関係か何かだろうか。
などと気楽に考えていたら。
クロコダイルが大きく大きく振りかぶった。
奴がどこからとも無く取り出したのは、柄ですら身長の倍はあろうかという超巨大な戦斧。それをどうやって振り回したのか分からないが、ともかく振り抜いてきた。
「おぉ」
当然当たらないのだが、流石にあんなものを食らえばマキナなど関係なく俺の身体がぶった切られる。つか死ぬ。
そんな想像をした時だった。
身体にチクリと痛みが走った。
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