大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
500 / 2,022
本編

形と金属

しおりを挟む
「……ざっとこんなモンでいいか?」
「んなモンでいいんやない?アンタ、結構器用やなぁ」
「そりゃそういうスキルですから」
そう言って身体のあちこちに張りついていた鎧を引っぺがし、一つの塊にまとめる。
…デケェな。邪魔だな。
一纏めにすると人の頭ぐらいある。
仕方ないので、三つに分けて懐に入れる。
「…なぁ、金属塊コレはどうにかなんねぇの?」
「うん?あぁ、全部完成したら収納形態になれるよう、一応考えてあるで。けどアンタの要望あればそっちにしてみるよう、努力はしてみるけど」
「どんな形よ?」
「コレと同じ形で」
と言って振り上げたのは、その手に握っていた鎚。
「…却下」
「えー、なんでぇや?サイズも重量もピッタリやよ?」
そう言われりゃ…そうなのか?
「イメージとしてはやな」
ベルが話を続ける。
「鎚の頭ん所に鎧の大部分を入れてしまって、柄の部分は軽めにするんや。普通に鎚としても使えるし、収納は今と比べて楽なはずやし、それでええと思うんやけど」
「なる…ほど。ちなみに大きさはどのぐらいに?」
「ウチが今使っとるんとほとんど同じや。一回りぐらい大きくなるかもしれんけど、武器として使うんやったら充分やと思うで。オリハルコンやから出来る芸当やけどな。これでミスリルとかやったら諦めてくれ、のお話やったわ」
「…あれ?オリハルコンとミスリルの合金じゃなかったっけ?」
魔法を(俺の身体程じゃないにしろ)弾く金属のオリハルコン。
魔法をよく通して色んな魔導具の素材になるミスリル。
この二つを、七対三の割合で混ぜた合金を使うと聞いていたのだが。
補足すると、オリハルコンは鉄などと比べて結構軽く、また頑丈なのだが非常に硬く、加工そのものが難しい。
逆にミスリルだと、鉄より重く、やや脆いが柔らかく、加工しやすい。
それを自由に扱っているベルがいかに優秀な鍛治師であるかがわかる。
それをさらに合金にし、完璧に仕上げているのがまた一流の証だ。
「アホ、それやとほとんど曲がらんやろうが。アンタが使う鎧は、アンタの意思で曲がるように出来とる。…その癖、しっかりとした強度もあるんや」
「ほぇー」
自信満々に言う…かと思っていたが、何でもないようにベルは言う。
『なるほど、オリハルコンだけなら硬すぎて鎚の形に出来ないし、軽すぎて使い物にならない。逆にミスリルだけなら柔らかすぎて変形してしまうし、重すぎるという話か』
そう言われると納得。
さて。
「用事はこれで終わったか?」
「えーよー。早う帰ったってシエルちゃんを安心させたりぃ」
そう言うベルのセリフを受けながら、軽く走って出た。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...