大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

執事と好奇心

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日もかなり傾き始めたので、俺とシエルは家に戻ることにした。
そうなると当然、聖女サマも戻らなくちゃならなくなる訳で、聖女サマも家に戻ることに。
で、一人で回っても面白くないと言うので、アーネも家に戻ることに。
アーネ曰く、
「星祭りは名前通り、夜がメインなんですわよ!?なんで今帰るんですの!?」
とか言われたが、それは仕方がない。
夜は──月は、シエルが怯えるのだ。
仮に夜に行くとしても、シエルを一度家に戻さないといけない。
とは言え、そんな事を言うのはシエルの気が引けるだろうと思ったので、適当に理由をつけて戻った。
そんな訳で、やや不満そうにしていた聖女サマと、やや得心のいかないアーネ、ややと言わずかなり疲労した風なシエルを引き連れ、一度帰宅した。
「おや、お早いご帰宅で。いかが致しましたか?」
帰ると、玄関にはモーリスさんが待っていた。
「いや、特に何かあった訳じゃない。ちょっと疲れたから夜までここで待とうかと思ってな」
「レィア様は星祭りは初めてとのことでしたが…失礼ですが、どこのご出身でございますか?」
聖女サマとアーネは既に中へ入って行っており、玄関口には俺とモーリスさん、あとは俺の上でへばっているシエルだけ。
「んー?なんかモーリスさんがそんなに気にするのは珍しい気がするけど…まぁ、東の方だよ。東の一番端っこ」
「東の最も端と言いますと…プクナイムですか。あそこも星祭りはそれなりに盛大だと聞いているのですが…?」
やや不思議そうにしながらそう聞くモーリスさん。
「いんや?もっと。紅の森って言えばわかる?」
そう言うと、モーリスさんはピシリと固まった。
「…………紅の森?あそこは人が住むような土地ではないと思うのですが…」
「住もうと思って住んでた訳じゃないんだがな。まぁちょっと事情があってそこに住んでた。それがどうかしたか?」
「いえ」
少し間を開けて再びモーリスさんが口を開く。
「この星祭りはどこの都市でも盛大にやるものなのですが、レィア様星祭りの存在すら知らなかった様ですので、少しばかり興味が湧いただけでございます」
「ふぅん、そうか。まぁ、好奇心は程々にしとけよ?好奇心は猫をも殺すって言うしな。特に、調とかな。アーネの父親の指図?」
そう言ってみるが、モーリスさんの答えは、
「はて、何のことでしょうか?私がレィア様の出身を聞いたのは私自身の好奇心でございますよ」
「……ふぅん、その忠義心って言うの?凄いな。アンタはいい人だから、早死しないことを祈っとくよ」
「私は充分長く生きましたので、レィア様やシエル様、アーネ様にエルストイ様、ロスト様が安心して過ごせるようにするだけですよ」
それを言い終わると、この話はお終いだと言う意思を込めた礼をして、モーリスさんは屋敷の奥に引っ込んでいった。
……カマを掛けてみたけど、当たりみたいだな。
聖女サマの方のゴタゴタ、どうやら俺がこっちにいる間に終わりそうだな。
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