大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

祭りと人混み

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ざわざわざわ。
………。
がやがやがや。
………。
…右見ても左見ても。
「人ばっかじゃねぇか!?」
思わず大通りのド真ん中で叫んでしまったため、一気に視線が集まるが──即座に散る。
周りを見れば、人、人、人、人人人人…。
「………おおい…」
シエルが早速ゲンナリしている。
早々に疲れてしまい、今は俺の肩に乗っている。
人混みが凄すぎて、一緒に出てきたアーネとははぐれてしまったし、シエルはあんまり楽しそうじゃないし、ちょいちょい髪を踏まれそうになってるし──。
「レィアさん、あれ!あれ何ですか!?」
「あ?知るかよ」
──何で聖女アンタが一番楽しんでるんだよ。
最初、特に何も考えずに俺とアーネとシエルの三人で出ようとしたら。
「護衛が護衛対象を置いていくとは何事ですか!!」
と聖女サマが一喝してきた。いや、エルストイいるから家にいればいいんじゃね?とか思ったけど、既に変装を終えてついてくる気満々な聖女サマを無理矢理部屋に押し返すほどの事じゃないと判断して四人で家を出たのが…一時間前?このクソ暑い中、この人混みに揉まれりゃシエルじゃなくてもバテる。
「行ってみましょう!ね?ね!?」
「おいちょ、待てアリス!休憩させろってば!」
あ、アリスってのは聖女サマの偽名。えーっと、確かフルネームはアリス・ロストだっけか?適当にも程があるが、バレなけりゃいいだけなので、問題は無い。
折角灼熱地獄から脱出したばかりだったのに、聖女サマに手を引かれて再び人混みをかき分けて進む。
「到着です!」
「……生き生きしてんな、オイ」
「…それはそうですよ。 選ばれる前にはここまで盛大なお祭りはありませんでしたし、選ばれたあとはパレードに出たりで忙しく、こうして遊ぶこともありませんでしたから…」
すこし寂しそうに言う聖女サマ。
「…あぁ」
そういや、言われりゃそうか。
お仕事があるもんな。
聖女サマが目指していた店は、何やら焼き菓子を作って売っている様だった。
「おいオッサン、これ三つ…いや、四つくれ」
「ほいよ!…あい、丁度だ」
俺の握りこぶしぐらいのサイズの茶色い球体をどうにか四つ持ち、一つをシエルに渡し、二つ聖女サマに渡す。
「これは…なんですか?」
「さぁ?多分美味いんじゃね?」
適当なことを言いながら俺も一つ齧る。
外はやや固く、中からはほんのり甘く、とろりとした液体が出てくる。
しつこくなく、結構美味い。
「なら、この三日間ぐらいは自由にしようぜ。忘れられねぇぐらいの」
「……美味しい」
聖女サマも楽しんでいるようで何より。
…さて、真っ赤な頭をした巨女も探しますかね。
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