大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

技と音

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翌日、アーネに修行の許可を貰ってから部屋を出る。
昼間は流石に血界を使えない──というか、ラピュセの張り巡らされた目があるので、そもそも訓練所で血界はあまり使いたくない。
ので、必然的に昼間は剣の練習となるのだが、その前に。
一応回復したらしい、他の二つ名持ち達の顔を見に行くことにする。
そこまで深い意味は無いのだが、二つ名持ち全員が結構なダメージを負ったらしいので、どうなったのか見に行こうかと。
幸か不幸か俺が一番ダメージを受けていた上に起きるのも遅かったので、他の二つ名持ち達は既にいつも通りの生活が出来ているらしい。
そんな訳で、まずは部屋を知ってるユーリアの所へ顔を出しに行った。
が、残念ながら外出中らしく本人には会えなかった。
じゃあ次は…と考えていると、よくよく思えば《雷光》はどの部屋か知らんし、《剣姫》の部屋もよく知らん。《臨界点》に至ってはそもそも寮の生活で会ったことがない気すらする。
じゃあユーリアの所にメッセージでも飛ばそうかとも思ったのだが、ふと思いとどまる。
もしユーリアと会ったら俺の修行どころじゃなくなる。あいつの事だから、不甲斐ない自分が情けないとか何とか言って、強くなるために付き合ってくれとか言われそうだ。
と言う訳でさらに方向転換。訓練所に向かう。
「さて、何するかな」
目下の目標はあの英雄オーリアン・グライガの防御をぶち抜いて、ぶった切れるようになることか。
『決まってないのか』
「正直俺の戦技アーツはちょっとした頂点のひとつだと思ってたんだがな。そこで胡座かいてたらそれよりもっと凄い奴がいた」
《音狩り》だったら、あの英雄を輪切りに出来ていた可能性はある。
だが、《音狩り》だったら、あの英雄は自身の戦技アーツを発動させていただろう。
あの場面で俺が生き残れる選択肢は《終々》しかなかった。それでも生き残るだけで、殺せはしなかったのだが。
『そもそもあの二つの戦技アーツってどんな戦技アーツなんだ?特に《終々》の方。切ってるのは分かるんだが、アレ見る度に思うんだが、斬撃撃ってる数毎回違くないか?』
「あぁそうだ。あれ?ナナキに説明したことって…確か無かったっけか?」
『聞いたらお前誤魔化したじゃんかよ。「ただ斬ってるだけ」って』
「ん?じゃあ言ってるじゃん。そのまんまの意味。ただ斬ってるだけだよ」
『いやいや言ってないだろ。もっと具体的な動きをだな』
「動きィ?ンなもん決まってな──うん?」
二年の訓練所が近づくにつれ、時折鋭い金属音が聞こえてくるようになる。
「誰かいるのか?」
『別にいいんじゃね?』
「確かに構わないんだが、なんつーか、聞き覚えのある音が他に…」
ドーンともゴーンとも違う、独特の音。螺旋階段を降りながらなんだったかと思い出していると、訓練所の前まで着いた。
「あ、思い出した。これ雷の音か」
そう言いながら訓練所の扉を押し開くと、訓練所のド真ん中で《雷光》と《貴刃》が凄まじい形相で文字通りの火花を散らしていた。
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