大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

兄と嗜好

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シエルの自己紹介もやや拙いながら終わり、そよ後すぐに夕食となった。色んなことを聞かれ、話しながらアーネの家族と飯を食った。
…まぁ、俺やシエルはほとんど飯食ってばっかりで、簡単な答えしか返せなかったけどな。
夕食は一時間程度で終わり、その日は荷物をあてがわれた部屋に放り込み、シエルと風呂に入って寝た。ちなみに部屋は俺とシエルが同室で、エルストイの部屋が二つほど隣りにある。
さて、一日明けて。
「おはようございます、レィアさん」
「ん?おぉ、エルストイか。おはよ」
「…………はよ」
「…シエル、流石に俺を盾にして後ろに回るのはちょっと…」
「ははっ、どうやら完全に嫌われた様だね」
部屋を出たところでアーネの兄貴とちょうど鉢合わせた。
「アンタがうちの子にいきなり告白なんてしなけりゃもっとマシだったろうがな」
「これは手厳しいね。しかし、美しい少女に美しいと言って何がいけないんだい?」
「美しいっていうことに関しては問題ねぇけど、その後に即『付き合ってください!』はねぇだろ」
お陰でシエルが全力で警戒しちゃってるよ。
ちなみに言葉遣いだが、無理してると即座に看破され、アーネの家族全員に普通に喋ってくれていいと言われたので早速崩した。
「そうかい?これで上手く行く時もあるんだけどなぁ…」
「ちなみに勝率は?」
「過去六回程度成功したことはあるよ」
何回チャレンジしたかの回数を言わない辺り、かなり残念そうだな。
「で、もし良かったらこの後私とお茶でも…」
「………や」
ほーら、また警戒させてるよ。
「そりゃ残念。君の方は?」
「あ?俺?俺は男だって言わなかったか?学生証も見せたろうに」
あぁそうそう、学生証は手元にあるが、制服は学校に預けてある。そのため、俺もシエルも私服。ちなみにシエルは真っ白なワンピースを。俺は上下黒のシャツとズボン。…というか、私服が基本これぐらいしかない。
「私はね、美しいものが大好きなんだ。当然、女性はすべからく美しい。だから私は手元に置きたい。つまりだ、君も充分に美しいから、私の傍にいて欲しい。そこに性別の壁などない。むしろ同性だからこそより親密になれると思うのだよ!!そう思わないかい!?」
うっわ、ゾワッとした。背中が一気に。イケメンが言うから尚更極まってヤバイ。そして当人に聞くのはどうかと思う。あと当然、越えられない壁は越えちゃいけない気がします。
『…ナニコレ。朝イチでとんでもない変態を見せられた気分なんだが』
俺もそう思う。つーか変態ってか変人ってか、その辺りの領域飛び越えそうで怖い。
「というか、アンタの妹はいいのかよ」
昨日、ガッツリ口論した挙句、軽くバトってたのが夕食の時に見られたんだが…。
「アーネがどうなのかって?愚問だな」
彼はそう言うと、無駄にポーズをつけながら俺にこう言った。
「彼女こそ素晴らしき美の──」
「何言ってるんですのッ!!」
訂正。その妹に全力でぶっ叩かれて言えてなかった。
まぁ、何となく言おうとしたことは分かったけどさ。
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