大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

腐屍者と勇者

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距離はわずか五メートル。
大剣の間合いにはやや遠く、魔法の間合いにはやや近い。
必然的に、俺は踏み込み、敵は下がらざるを得ない。
そして俺は、床を蹴ると同時に──。
「レィア!跳べ!」
──緋眼に危険反応有り。
「ッ!」
勢いを殺さず、即座にジャンプ。床から生えたを避ける。
訂正、避けられなかった。
そのナニカはそのまま伸び、俺の足をぐっと掴んだ。
「!?クソっ!」
足を掴んだナニカを咄嗟に斬り飛ばす。
右手が持つ金剣を一閃。
ナニカを斬った手応えと同時に、足を掴んでいた抵抗が消える。
バランスを崩さない様に空中で前転、そのまま走り続けようとして──足が止まった。
否、止められた。
「なっ」
下を見れば、無数の腕、腕、腕。
腐ったモノ、折れ曲がったモノ、指が欠けたモノ、蛆の湧いているモノ──。
それらが絡み合い、組み合いながら俺の足をガッチリと掴み、俺を更に這いつくばらせようと下に引っ張る。
「くっそおおおおおおおお!」
腕の力は異常なまでに強く、ちょっとやそっとじゃ抜け出せそうにない。
それどころか、掴まれている足がミシミシと音を立て、今にも砕かれそうだ。
「──その程度か」
前から声が聞こえる。
視線を上げると、一歩たりとも動いていない腐屍者が俺を見下していた。
「勢いよく啖呵を切ったはいいが、僅か数歩歩いたのみで、我の魔法に引っかかるとは。何とも未熟な事よ。お主が新しい《勇者》?半世紀程前の《勇者》は良かったぞ?あれは非常に良い相手であった…なぁ?」
「半世紀前の…《勇者》?」
それってもしかして…。
「レィア!第二血界!」
後ろのシャルの声ではっとする。
「第二血界!《血呪》、限定発動!」
ずっ、と。
腕に絡まれて見えない足に、黒々とした紋様が刻まれる。
「ああああああああああああああッッッッッ!!」
ぶちぶちと音を立てて腕が千切れる。いや、もしかしたら俺の足の筋肉とかそう言うのかもしれない。
何にせよ、腕の塊から脱出出来た。
「──良い。実にい」
「第一血界!《血鎖》!!」
空中にいる間に血鎖を発動、直にジェルジネンを狙うが、下から生えた莫大な量の腕が壁を生し、血鎖を弾く。
「──起きろ」
その一言で、地面から生えていた腕、その下が更に起き上がる。
すなわち、屍者ゾンビ飢餓者グールだ。
「腕の魔法と屍者ゾンビ達の魔法は並列して使えない!蹴散らしちまえ!今代の!」
「おう!」
地面に着地するなり、視界は腐肉で埋まった。
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