1,555 / 2,022
本編
理由と子
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色々とすっ飛ばして、どういう話があったかだけを伝えよう。
今回のコルドーは何がまずいかと言うと、まず第一にコルドーが狭間の子に接触した、あるいはそうでなくとも、狭間の子という存在を知覚した事。
これはシンプルにまずい。理由は言わずもがな。
とは言え、狭間の子がもしもこちら側に来ていたら、既にこの国は滅んでいるか全民衆が周知するような大事件になるので、直接の遭遇はなかっただろうと言うのが俺達の考えだ。
捕獲出来ている聖学が控えめに言って頭がおかしいだけだ。
で、もう一つまずいことがある。
耳長種側が明らかに狭間の子という存在を知覚している点だ。
存在を知りつつ、それを秘匿しようとしている辺り、これがどういう物かはさておき不味いものである事は知っているということだ。
ユーリアはどうか分からないが、間違いなくルプセル辺りは狭間の子というものを知っているだろう。
この世界に本来居てはいけない存在。しかしそれは、居てはいけない、禁忌の存在であるが故にヒトの心を好奇心で刺激する。
そして、狭間の子はそれを待っている。
深淵を覗き込んだ者は、常にこちらを見ている深淵と目が合い、そして引きずり込まれる。
あの男に限って、そう簡単に好奇心などという安い言葉で手を出したりはしないだろうが…
実力的にも立場的にも、そう簡単に口封じ出来るような相手では無いので、現状では見守るしかないのが厳しい所か。
ルプセルと戦うなら、勇者として戦い、かつ血界を惜しまずに周りの被害を考えず、五分で俺が倒れるような戦い方をすれば勝てるだろう。
もっとも、どこかから横槍が入れば簡単にこちらが死ぬような、薄氷の戦いではあるが。
しかし、微妙に腑に落ちない点として、何故耳長種はコルドーを処刑ではなく追放したのか。
最も簡単な方法はコルドーを殺して口封じする事だろう。でなければ追放した先でまた研究を始めるのは目に見えている。
実際、追放した先でコルドーは人体実験をし、膨大な魔力も集めていたようだ。今となっては何故なのかは分からないが、何かに備えていた事は確かだし、それが狭間の子と接触するためだと言われても何の疑問も抱かない。
体裁があるにしても、研究を即刻中止させて追放する程度には狭間の子の危険性を知っているなら、間違いなくコルドーを殺し、表向きには病死したとでも言っておくべきだ。
それをしなかったという事は理由があるはず。
処刑しなかったのか、処刑出来なかったのか、逆に追放したかったのか。
どれもありそうではあるが、結論を急くと思わぬ失敗をしそうだ。今は考えるべきではないか。
「………。」
ふとそこで、うなじの辺りがぴりりと反応した。
上手く気配を消してはいるが…あぁ。
「入っていいぞ」
暫くは無言、無音。
しかし、もう暫く待つと、静かに戸が開く。
静かに入ってきたのは、予想通り。
シエルが入ってきた。
今回のコルドーは何がまずいかと言うと、まず第一にコルドーが狭間の子に接触した、あるいはそうでなくとも、狭間の子という存在を知覚した事。
これはシンプルにまずい。理由は言わずもがな。
とは言え、狭間の子がもしもこちら側に来ていたら、既にこの国は滅んでいるか全民衆が周知するような大事件になるので、直接の遭遇はなかっただろうと言うのが俺達の考えだ。
捕獲出来ている聖学が控えめに言って頭がおかしいだけだ。
で、もう一つまずいことがある。
耳長種側が明らかに狭間の子という存在を知覚している点だ。
存在を知りつつ、それを秘匿しようとしている辺り、これがどういう物かはさておき不味いものである事は知っているということだ。
ユーリアはどうか分からないが、間違いなくルプセル辺りは狭間の子というものを知っているだろう。
この世界に本来居てはいけない存在。しかしそれは、居てはいけない、禁忌の存在であるが故にヒトの心を好奇心で刺激する。
そして、狭間の子はそれを待っている。
深淵を覗き込んだ者は、常にこちらを見ている深淵と目が合い、そして引きずり込まれる。
あの男に限って、そう簡単に好奇心などという安い言葉で手を出したりはしないだろうが…
実力的にも立場的にも、そう簡単に口封じ出来るような相手では無いので、現状では見守るしかないのが厳しい所か。
ルプセルと戦うなら、勇者として戦い、かつ血界を惜しまずに周りの被害を考えず、五分で俺が倒れるような戦い方をすれば勝てるだろう。
もっとも、どこかから横槍が入れば簡単にこちらが死ぬような、薄氷の戦いではあるが。
しかし、微妙に腑に落ちない点として、何故耳長種はコルドーを処刑ではなく追放したのか。
最も簡単な方法はコルドーを殺して口封じする事だろう。でなければ追放した先でまた研究を始めるのは目に見えている。
実際、追放した先でコルドーは人体実験をし、膨大な魔力も集めていたようだ。今となっては何故なのかは分からないが、何かに備えていた事は確かだし、それが狭間の子と接触するためだと言われても何の疑問も抱かない。
体裁があるにしても、研究を即刻中止させて追放する程度には狭間の子の危険性を知っているなら、間違いなくコルドーを殺し、表向きには病死したとでも言っておくべきだ。
それをしなかったという事は理由があるはず。
処刑しなかったのか、処刑出来なかったのか、逆に追放したかったのか。
どれもありそうではあるが、結論を急くと思わぬ失敗をしそうだ。今は考えるべきではないか。
「………。」
ふとそこで、うなじの辺りがぴりりと反応した。
上手く気配を消してはいるが…あぁ。
「入っていいぞ」
暫くは無言、無音。
しかし、もう暫く待つと、静かに戸が開く。
静かに入ってきたのは、予想通り。
シエルが入ってきた。
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