大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

説明と遭遇

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出店を幾つか周り、アーネと喋りながらぶらつく。話に上がるのは、少しばかり離れていたこの間の期間の話。
と言っても、話せる内容はかなり少ない。立て続けに出来事は起きたが、どれもが勇者絡みなので、彼女に話せることではない。
そうとはいえ、まるで何も話せない訳では無い。
プクナイムでは黒い石と、新種の魔獣が原因で騒動があった。
──その裏では半魔族が糸を引いていた。
久しぶりに自宅へ帰ると、セラがヤツキの所にいた。
──そしてここでも半魔族が関わっていた。
王都に寄って、ユーリアの所で少し厄介になった。
──その時、王都に来たもう一人の《勇者》とぶつかった。
ボリュームは半分ぐらいになるが、それでも十分濃い内容。アーネは驚くなり呆れるなりしつつ、話を聞いていた。
「相変わらず、どこに行っても騒ぎの中心にいるんですわね。どうしてこの短期間でそこまで事件を起こせるんですの?」
「俺は何もしてねぇ。ただ単に厄介事が向こうから突っ込んでくんだ。ふざけやがって…」
どこに行っても、必ずそういった事に絡まれる気がする。
「俺だって出来ることなら気楽に過ごしたいが、どうもそうならんらしい…まぁ、今回は色々と探りを入れていたのもあるんだが」
「何をしてたんですの?」
「ん…シエルについてだ」
どこまで話すか…少し迷い、こんなに大勢いる所で話すことではないと思い、後で話すと話を切る。
「本当、貴方はそればかりですわね…その怪我のことも何一つ聞いていないんですけれど」
「これか?これは…ちょいと通り魔にやられた」
「貴方がそんなくだらない理由でやられる訳ないでしょう。あんな綺麗に骨も内臓も斬られているなんて、見たこと無いですわよ」
これも言えねぇよなぁ。笑って誤魔化そうとすると、手の甲を抓られた。
「痛てて」
「いつか話してもらいますわよ」
無理に追求しようとしない辺り、俺としては非常に助かる話だ。言い訳を考えとかないとな。
「ところで、話は変わるんですけれど」
「あ?どうした」
「貴方、ユーリアと演劇を見たんですって?」
「あぁ。それが何か?」
「二人きりですの?」
「まぁそりゃ。王都の知り合いなんて他にルト先輩ぐらいしか居ないしな」
どうした?と聞くと、アーネはふーん、そうですの。と何か考え事をしている様子。なんだ?
「私とも今度見ますわよ。丁度明日、有名な演劇の一座が来るらしいですし、見に行きませんこと?」
「別に構わんぞ。平和な出来事イベントは諸手を挙げて歓迎する」
そう言うと、繋いだ手に、幾分力が込められたのがわかった。
と、ちょうどその時だった。
「ん?」
「ん?」
視界の隅にベルが映り。
同時に、懐かしきラウクムも視界に入ったのは。
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