大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔導書と魔術

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「ふぅ、いい風呂だった」
身長より長い髪を拭き、吸った水を少しでも抜きながら浴室から出る。
飯を食う前にひとっ風呂浴び、訓練の汗やら何やらを落として気持ちがいい。
ちなみにアーネとシエルは先に入ってた。
「アーネ、どうだ?」
「んー…」
部屋の机の上に、俺が借りた本を開きながら唸るアーネ。
あまり芳しくないらしい。
俺の下へ「………おかあさん!」とか言いながら突撃してくるシエルに構いながら、シャルと話す。
風呂上がりだからいい香りがするなぁ…。
『なんだっけ、魔法書?魔導書?そんな感じのスゲェ本…なんだろ?いや、俺は字が読めねぇから詳しくは知らんけど』
らしいな。
アーネ曰く、「これを読めば、この本に書いてある魔法が習得できるんですわよ!!なんの苦労も無しに!!」との事。
…なのだが。
『苦労、してねぇ?』
だよなぁ…。
なんと言うか、読めば苦労なしに習得できるかもしれないが、読むことそのものに苦労してるような感じだ。
『お前さんは普通に読めたんだろ?なら、特に暗号とかって訳じゃなさそうだが…』
聞いてみるか。
「結構かかってるけど、何かあったのか?」
「術式が馬鹿みたいに複雑なんですわよ。オマケに、何かこう、遠回りしているような変な違和感があるんですの…というかこんな魔法、一体何に使うんですの?」
「遠回り?具体的に?」
「…鮮やかにスルーですのね。……たとえ話ですけど、十×十をして百を出すんじゃなくて、一+一を繰り返して百を出してる気分ですの」
なるほど、わからん。
『あぁ、そういう事か』
え、何?シャルは分かるのか?
『多分。…今代の、今回の特級魔法ってのは夢に干渉する魔法なんだよな?』
まぁそうだ。リーザも夢で腐屍者と出会ったって言ってたから、そこから辿るつもり。
『その手の魔法はほとんど魔術の領域だ。魔術なら、夢に干渉して会話をするって魔術で済むが、魔法ならする事が増えるんだよ。夢を両者に認識、夢を固定、さらに介入、両者を安定させ、言葉を通じるようにして…ってな風に、物事一つ一つを全て魔法で定義してかなきゃならない。だからこんなに使えねぇ魔法なのに特級クラスなんだろうな。ちなみに、多分魔術に置き換えてクラス分けするなら、下二級ぐらいになる』
なる、ほど…。
何となく、朧気だがわかった気がする。
なら、魔術は俺たちに使えないのか?
『知らん。俺を誰だと思ってやがる』
…そうだわな。勇者だもんな…。魔法とかは普通、全然知らねぇよなぁ…。
とりあえず、アーネにひと声かけとくか。
「アーネ」
「なんですの!?集中力が途切れますの!!」
「お前しか出来ないんだ。任せる」
『今代の…お前って奴は…』
シャルが何か言ったが、それを気にする前にアーネの顔が一気に真っ赤になった後、「もっ!もちろんですわ!」と言い、猛然と読み始めた。
…うん?間違ってないだろ?俺とお前は分からねぇし。
『…あぁ、お前さんに他意が無いのは知ってるよ…』
しかし、何故かため息が聞こえた。
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