大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

移動と遭遇

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そんでもって翌日朝。
俺はユーリアとルプセルに挨拶をしてから屋敷を出た。マルセラは祭りの警備とかで俺より早く屋敷を出たらしい。
昨晩は、後になって押さえ込んだイライラというかムカムカがせり上がってきて、当たり散らしたくなった。そのせいで若干寝不足だが、まぁ仕方あるまい。きっと向こうも同じ状況だっただろうと思えば多少は気が晴れる。
王都を北へと上がっていき、北の第一都市で少し遅めの朝食をとり、また歩き始める。このペースだと案外早く着くか。そう思っていた矢先、大通りが一気に混み始める。
「昼だもんな。そりゃ祭りで色々と始まるか」
「おっと!嬢ちゃん悪いな!」
ドン、とぶつかり髭面のオッサンに謝られる…ふむ、一応スリの類いではないか。
しかし今のは結構痛かった。別に向こうに悪気がある訳ではないだろうし、強くぶつかられた訳でも無い。
単純に傷に響いただけだ。
『多少遠回りでも路地裏に入って人混みを避けたらどうだ』
「そうすっか」
左肩をさすっていると、シャルがそれに気づいてそう提案してきた。
出来るだけヒトの流れに逆らわないようにしつつ、適当な路地裏に入り、静かに進む。
基本的に都市が王都に近ければ近いほど、居住スペースの関係で建物は高くなるので、時折方向を見失いそうになりながらふらふらと歩く。
余談だが、王都の建物自体はそこまで高くない。法律で、特別な許可や理由が無ければ一定以下の高さにしなくてはならないようだ。
ではどうやって狭い王都で住民を住まわせるのかと言うと、地下に広がることで解決したらしい。地盤や空気、明かりなど全て魔力で解決しているそうなのだが、それも限度があるらしく、そこまで深くないらしいが…それでも充分だと思う。
閑話休題。
全く知らない通りを感覚のみで歩き続け、狭い土地で多くのヒトを受け入れようと拡張した結果、複雑になった路地裏はまるで迷路のよう。ちょくちょく大通りに戻って顔を出し、方向を確認しながら進んでいって、夕方頃になってようやく第二都市との関所に着いた。
晩飯も食いたいが、星祭の間は都市間の移動は早めに締め切るとユーリアが言っていたので、移動を優先する。
さて、思ったより早くついたな。今日中には着かないと思っていたのだが。
荷物を持って先にアーネの家に…と思ったが、そう大した荷物でもないし、今日の朝頃に届いているはずのメッセージでは、明日に着くと言ってある。あまり早く来ると色々と向こうの予定が狂うかもしれない。今日一日は適当に時間を潰して明日昼頃に向かうとするか。
「とりあえずメシか」
幸いにも星祭のため、出店はそこらかしこで見られる。手持ちは少ないから節約だなぁ…宿屋分は…これだけ引いておけば大丈夫か。で、残りがこれだけだから…よし、大丈夫だろ。
そう思って左肩を気にしながら人混みの中に入ると──
「あ?」
「あら?」
「えっ?」
丁度アーネと聖女サマに鉢合わせた。
何故聖女サマまでここに?
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