大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

溜息と人探し

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そんな訳でここにいる予定が少し伸びた。個人的には面倒な事を避けたかったのだが、今回の案件は流石に無視できない要素がそれなりに多かった。
なんだよ《巫女》って。俺みたいな変な存在もいる訳だし、新しい特殊ユニットの可能性が捨てきれない。それに、その《巫女》が魔族の仕込んだ罠とかなら、内側から結界を食い破られる可能性もある。
「面倒なことになったな…」
がりがりと頭を掻き、ため息をつき、眼下の王都を見下ろす。
現在俺は屋敷の屋根の上に立っている。理由は単純、少し一人になりたかったからだ。
王都のド真ん中に立つ大貴族の屋敷の上に誰かいるとなると騒ぎになりそうなものだが、そこは慣れのせいだろうか。ほとんど誰もこちらを見上げてはいない。
数人は屋敷の方を見てはいるが、俺には気づいていないようだ。
ルプセルは俺がもうしばらくこの家にいる事を許可してくれたが、俺としてはとっととこの件を済ませて出て行きたい。あとはユーリアから例の情報を回収して終わりだ。
と言っても、分かっているのは《巫女》と呼ばれる存在の見た目だけ。《巫女》を通した門兵の記憶からスキルによって見た目を引っ張り出し、写した物らしいので、間違いないとの事。
事が事だけに人手を増やす訳にも行かないので、今回はかなり大雑把な方法を取ろう。
今回の目的は《巫女》の確保。出来るだけ生きて受け答えが出来る状態が望ましいが、どうしてもどうしようもなかった場合、殺しても大丈夫らしい。
「殺すのは不味いだろ。あいつらまた変な偶像作り出すぞ」
と聖女サマやルプセルに言った所、聖女サマは顔を少し陰らせながら、
「大丈夫です。今は何より時間が必要なので」
という返事を返した。
つまり逆に言うなら、今回の件は聖女サマも早期解決を望んでるわけだ。まぁ、対処が遅れて百人規模の馬鹿が乗り込んできても正直困る。そっちの処理はルプセルが全力でどうにかしているらしいが…
「まぁなんにせよ、手を抜く必要は無いか。起きろマキナ」
そう言って、俺は手から血を流す。
流れ落ちた血の雫はマキナに吸われ、それを確認してから軽く上に放り投げる。
すると、マキナは空中でピタリと浮いて止まり、鎚の状態のまま話しかける。
『何用・でしょうか』
「お前を使って《巫女》を探す。索敵可能なレベルで最大幾つに分裂できる?」
『五百十二・です』
「持続時間は」
『ブラックボックスの・使用を・解禁するのであれば・四時間・八分・です』
「貯蔵は今何割だ」
『五十五パーセント・です』
「じゃあ二十五は残せ。あと、分体を一つ俺に残して索敵。容姿はさっきお前も見たな?それを頼りに探せ。もし見つけたらすぐ俺に連絡、見つけた奴はそのまま追跡」
『了解・しました』
マキナはそのまま五百を超える粒に分裂、王都に散って行った。
ざっくり計算して、マキナが活動出来る時間は二時間弱。どうせこれ以上探しても見つからないなら意味は無い。夜か別の日にでも探す方が効率的だ。
さて、俺も行くか。
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