大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

現状把握と対応

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《巫女》。当然俺の記憶にはそれに該当する存在はいない。
『知らねぇなぁ…』
それはシャルも同じだったようだ。
そりゃそうだ。シャルが知ってるなら俺も知ってるだろう。
彼女が俺に隠す必要性も無いし、最近はどうも彼女も知り得ない事が多発している。これもその一つか。
「《巫女》ねぇ。巫女ってーとアレだよな、神託的な物を受け取…おっと失礼。なるほどねぇ…」
これは教会側からすれば決して看過できる存在ではあるまい。
神の言葉を聞けるという存在が《聖女》と対立しているのであれば、教会が擁立する《聖女》というものの存在が揺らぐ。
だが切り札としてこちらは神そのものがいたはずだが…今は聞ける空気ではないな。
「んでどうすんだ。王都に来たんだろ、そいつらが」
「えぇ。そこからは…お願いします」
「王都に出入りする人間は全てこちらで管理している。この国の性質上、どこからどう移動したかはよく分かるからな。結果から言うと、王都に来たのはその《巫女》だけらしい」
「…あぁ?王都に戻ってきたってのはその百人じゃないのか?」
「いや、どうやら《巫女》一人がこちらに来ているようだ。流石に百人も一度に来るとこちらでストップをかける」
「ふーむ…《巫女》を通さないって事は出来なかったのか?」
「残念ながら情報が遅かった。通した後で《巫女》だと判明したんだよ」
なるほど。面倒な。
「現在《巫女》は、新しい活動拠点を探しているらしい。それを追うようにして西方から王都への大移動が見られる。こちらで活動する気なのは間違いないだろう」
「んー……んん…変だよな」
腑に落ちない。と言うより、端的に言うならやはり『変だ』なのだが。
「なんで《巫女》単体で王都に乗り込む。普通なら親衛隊的な何かと一緒か、あるいは活動拠点を探すだけなら下っ端が来りゃいいだろ」
「それを成せるだけの能力が、あるいは作戦があるからではないでしょうか」
「………。」
一番有り得そうなのは、ユーリアのような隠密系の能力持ちが傍にいる可能性か。
あとは《巫女》がいるという情報がフェイクか、それを利用して何かを釣ろうとしているのか。
「如何せん、情報が少な過ぎてその理由が分からない。分からないが、現状を端的にまとめるなら、敵組織の頭目が一人であるという状況だ。逃す手はないだろう」
まぁ、まとめるならその一点になるか。
「そこで、レィアさんに手助けをお願いしたいのです」
「俺は構わないが…英雄はどうした。一人動かせば俺なんか要らないだろう」
「それが出来ない状況だからだよ。レィア君」
ルプセルがそう否定した。
「現在、英雄の皆さんは結界の四方にある守人の所へと向かっていて、手が空いていないのです」
「はぁ?英雄は聖女を守る仕事だろうがよ…つか英雄は五人だろ、一人聖女サマにつけとけよ」
「いえ、一人王都にいらっしゃるのですが…防御力が非常に秀でたお方で」
「あぁなるほど。そういう事ね」
「攻撃になると王都への被害が大きく…」
「どういう事だ…?」
話の前後がまるで繋がっていないように感じるのは俺だけだろうか。
「私も手を貸したいのだが、もし戦闘になった場合、周りの被害が大きくなりかねない。ユーリアに聞けば、君は魔法を使わないそうだ。これなら市街地戦となっても被害を最小限に抑えられるだろう」
「…まぁ妥当、か」
「相手の手の内が読めない以上、不確定な事も多く、こちらも出来るだけ大きな戦力をぶつけるしかない状況だ。色々と不満はあるだろうが、君の力を借りたい」
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