大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔族と魔術

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とはいえ、急に戦技アーツだけでやれと言うのは無理な話なので、戦技アーツと普通の攻撃を織り交ぜた連撃でやってもらう事にした。この動きがそのうち洗練され、無駄が省かれ、一つの《型》として完成すれば、その動きは戦技アーツへと昇華される。
みんなが尋常じゃなくやりにくそうにやっているのを暫く眺めながら、シャルと再び会話を始める。
…で、その三大魔候だっけ?そいつ何?ついでに魔族の王って何よ。まさかまんま魔王とか言わねぇよな?
『まず、三大魔候ってーのは、馬鹿みたいな魔力を保持して長い年月を生き続けてきた魔族だ。歳は一番若いのでも五百は越えてる…と思う。それぞれ物騒な名前とそれに見合った独特の魔術を使う』
魔術…?魔法の事か?
『ちょい違う。魔法ってのは魔力をもって世界に働きかけ、一時的にその事象を具現化させる事だ。魔力を使いこなせりゃ基本、訓練をある程度積めば誰にでも出来る。…ちなみに魔族は呼吸でもするみたいに使うがな』
おう、そりゃ知ってんだよ。…そういや、シエルはどうなんだろ。あの子はハーフだから使える…んだろうが、魔法を使っているところを見た事が無い。俺は何も助言が出来んからなぁ…。
『…話を戻すぞ。で、魔術ってのはその一歩先の技術だ。魔法が魔力による世界の間接的改変なら、魔術は技術と魔力による世界の直接的改変、認識の改変だ』
……ん?
『たとえば、魔法によって魚を焼くとする。この時、魔法の場合は必ず火を作るなりなんなりして焼くしかない。だが、魔術は違う。魔術の場合、一定の手順を踏まなきゃならないが、魚に魔術を使った時点で魚が焼ける』
ふーん。で、だから何?
『…今代の、つまり何が言いたいかと言うと、魔術の射程内に入ると、魔術が発動した時点で何の予兆もなく焼かれ、煮られ、斬られ、穿たれるんだぞ?』
……!!
『やっと分かったか。魔法なら炎を避ければいい。熱湯を弾けばいい。鎌鼬を砕き、土で出来た槍をへし折ればいい。だがそれが出来ない。ついでに言うならな?今代の。。魔法にはない技術の部分があるから、完全には防げねぇんだよ』
マジかよ。そんな攻撃、どうしろってんだよ。
『その前に認識の方についてもレクチャーを…する前に来たぞ』
何がよ。
「き、教官んん…ど、どうすればいいですかぁ…?」
ふと視線を声の方に向けると、女子ちゃんが涙目でこっちを見ていた。
…この話、また夜にでも。
『おう、がんばれよ、殿?』
あえて強調して言うんじゃねぇよ。
下ろしていた腰を上げ、女子ちゃんの方へと歩き出した。
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