大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

解散と休息

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先程一試合見せたように、俺達が剣だけで戦うと一試合は非常に短い。
剣以外に魔法やらスキルを絡めればもっと戦いの幅は広がるし、当然試合も長くなるのだが、双剣に慣れるという事が第一の試合なので、そういうのは一切無しでやっている。
しかし、一試合が短いとしてもこちらの体力と精神力が参る。休憩も挟んでいるが、ユーリアは普通に刃引きしてない真剣を使ってくるし、それを普通に戦技アーツで心臓だの首だのに遠慮なく振り下ろしてくる。
一度その事について軽く文句を言ったら「どうせ当てることも出来ないのだから、少しでも実戦に近い方がいいだろう?」と言われた。
違ぇよ馬鹿、真剣だから当てられたら痛いし死ぬし全力で避けてんだ阿呆。信頼の証なのか、まさか私程度の剣を避けられないはずがないよな?という煽りなのかは分からないが、そういう事もあって俺は割と本気で命のやり取りをしていたりする。こちらは一応刃引きしたり、聖学に居た時は銀剣をマキナでコーティングして切れないようにしているのだが。
二回やって五分休憩、それを三セット程した所で、兵士の皆さんが何人かやって来た。
彼らは俺を見るとぎょっとするも、隣にいるユーリアか俺の腕につけている印を見て納得したのだろうか、軽い会釈をする以外は特に何も言わずに訓練所の物置の方へと入っていった。
「…兵士の人らもここを使うようだし、今日はもういいだろう?」
「そうだな。私としては少し物足りないが…しばらくは居るからまた機会はあるだろう。また今度だな」
恐ろしくタフだなコイツ…こっちは休憩挟んでも体力的にそろそろ厳しいんだが。だから正直、兵士達が来てくれたのは助かった。
そんな訳で解散、部屋に戻ってみると、俺が宿屋から攫われる際に置いてくることになった荷物諸々と、先に払ってあった三日分の宿代が分かりやすく部屋に置いてあった。一日は泊まったし、少し返そうかとも思ったが、誰に返せばいいか分からない。ユーリアに返しても笑って押し付けてくるだろうから、迷惑料だと思って受け取っておく。
荷物の確認やマキナに血を少し入れたり、部屋のあちこちを見回って軽くシャワーを浴びて汗を流した頃、またユーリアがやって来て特に意味もない雑談をする。
暫くして夕食を食べに行き、夜の訓練所に少し入ってシャルと色々話しながら一人でマキナ製の銀剣を振っていると、なんとはなしに背中がぴりりと疼いた。
一瞬魔族がいるのかと思ったが、どうも表現しにくいがそういう感じではない。ひとつ確かなのは、それに害意は無いという事だろうか。
少し考えて、上の方にはあの大きな塔があるのだと思い当たる。そうか、今頃はあの塔の中か上かそれとも地下か、なんにせよそこで結界を張っているのだろう。そのせいか。
一人でそう結論づけると、俺はまた剣を振り始める。
しばらくしたらいい汗をかいたので、今日はこれで終いとする。大浴場だけではなく、部屋にも備え付けの風呂があるという贅沢な家だが、流石にこの深夜に風呂を沸かすのは少々面倒なので、シャワーで身体を軽く綺麗にしてから異様にふっかふかのベッドに入る。今日は行きそこねたが、明日は大浴場に行ってみるか、などと思いながらその日は寝た。
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