大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

真と老獅子

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俺はもう一度頭を掻き、眉間に軽くシワを寄せながら口を開いた。
「仕方ない、じゃあ白状しよう。どうせ何言ってもダメだろうしな」
「理解が早いモンは助かるのう」
「ただ、条件がある。条件っつーか、前提条件か」
「む?」
「単純な話だ。嘘は言えないが、言えないこともあるって事だ」
「その程度は無論あるじゃろう。が、確認じゃ。どのぐらい含まれる?」
「そうさな…」
今までの話を振り返り、言っていい情報と言ったら不味い情報を確認する。
勇者関連と、半魔の存在、それが同僚だったこと、あとは銃…もか。
「四割強って所だな」
「多い。もっと教えてくれんか」
渋い顔をして大隊長が譲歩を迫るが、こちらとしても割と不味いことだらけなので、譲ることは出来ない。
「断る。これ以上言うつもりは無い」
向こうの隊員達には大隊長の身体で見えない位置から、黒剣の柄を軽く二度、手の甲で叩く。
「…分かった。仕方あるまい。君も秘密の多い女性という事だな」
「…ガロン、一個訂正しとく。俺は女じゃなくて男だ。こんなナリでも胸はないしナニはある」
真面目な空間に、微妙な沈黙が生まれる。
「…申し訳ない」
「いいさ、とは言わんがよく言われる。ありとあらゆるモンが女基準で組まれた男みたいなもんだ。コルドーも俺を女と勘違いしたしな」
本当に忌々しい。正直この男のような見た目が羨ましくてしょうがない。
さて。
「じゃあ真面目な話に戻るか。まずはそうだな、俺がコルドーを探していた理由からだな」
そこから十五分ほどかけて、コルドーにあらためて全てを説明していった。
コルドーが謎の黒い石を求めて俺に襲撃をかけた事、それを知った俺がコルドーと戦闘になった事、魔族が手引し、コルドーが逃げようとした事、それを止めるため、俺が両者を殺した事。
「…本当かね?」
「嘘だと思うか?老獅子さんよ」
「…そうは思えんから聞いとる。しかしまさか…」
「俺の話はこれで終わりだ。隠し事はあるが嘘はない。それでも疑うなら…まぁ、単純に信じられないような話ってだけだな」
さて、話も終わったし、俺も行くかな。
そう思って痛む身体で立ち上がると、ガロンがもう一度声をかけた。
「本当に…本当に魔族が結界の中にいたのか?」
「あぁ本当だ」
答えは間髪を入れずに。
「俺は本物の魔族を見たことがあるが…あれは間違いなく魔族だったよ」
「……そうか。では今後、より厳戒な警備をしなくてはな…」
結界を抜けられたのだ。そう思うのは当たり前か。
「んじゃ、俺は行くよ。もう話は──」
「無いな。が、しかし…せめてその身体を綺麗にして行かんか?」
俺の身体…なるほど。見下ろしてみると、拭ったとは言え血が髪や服についたままで、時間が少し経った今、夏という事も相まってかなり強い異臭を放ち始めていた。
「…そうだな。風呂…は、さすがに不味いが、どこかで湯浴みでもしてから出るか」
自身の傷を見、しばらくは風呂に入れそうもないとため息をつく。アーネが居りゃ楽だったんだが。
「宿舎ので良ければ貸そう。それと、今日の話は…」
「言うかよこんな話。魔族が結界抜けたなんて知れたら、この都市どころか国がひっくり返りかねんぞ」
「分かってくれて助かる」
さて、とりあえずは宿舎に向かって身体洗って、あとは着替えたら出るか…と思っていたら、ついでと色々ちゃんとした手当やら何やらも受けていたら日が暮れた。
…明日の朝出よう。
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