大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔法と虫

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「よう、なんかあったか」
『レィアさん!今どこですか!?』
「あ?」
何やら切羽詰まった声。明らかに尋常ではない。
「今ァ森の中だ。どうした」
『外見てください!都市の方です!』
「…?、わかった。ちょい待ってろ」
ひとまず人形の話は後回しだ。急いで森の外へ向かう。
一番近い外縁部がどの道荷車の辺りだったのでそこに出ると、ニケも丁度こちらに向かっているのが見える。
そしてその奥、都市側の方では、時折何かが光っている。魔法だろうか。
一度撃つ度に、遅れて空気が揺れるのを感じる。それ程の魔法なのだろうが、何度も撃っているところを見ると、意外と苦戦しているのかもしれない。
「レィアさん!あの!あれ見てくださいあれ!」
「あぁん?あれつったってどれだよ」
都市の方を見ろと言われていたし、指さしされる方もやはり都市。
目を凝らしているが、見えるのは時折光る何かのみ。具体的には距離がありすぎてちょっと…うおっ!?
「てめぇ何するニケ!」
「喋ると舌噛みますよ!」
強引に荷車に乗せられると、ニケが唐突に猛ダッシュを始めた。
舗装なんぞ全くしてない荒地だ、石や凹凸を踏む度に荷車が跳ね、その度に尻を強か打ち付ける。
ちょっと待て、軽くしゃがむ形にして衝撃を殺さんと尻骨が割れる。
「あの魔法です!あれがヤバいんです!」
「お、おう、景気よく撃って、んな。魔獣、やるにゃ、いいだろ」
辛うじて喋れはするが、かなり酷いな。伝わりゃいいか。
「違うんです!あれ、味方です!」
「だろうな。大方奥の手の魔法部隊か?いい質と魔力量の魔法だな」
術式とかもいいのかもしれんが、俺が見えるのはどんな魔力がどれぐらい込められてるかぐらいまでしかわからん。ましてやこの距離ならそれすらギリギリだ。
「違うんですって!あの魔法、味方にも撃ってるんですって!」
「…あ?」
「魔獣の処理中、魔法部隊の数人に寄生虫が入ったみたいで、突然暴れだして…」
「んじゃあの魔法、全部無差別にぶっぱなしてんのか!?」
「………はい」
大分近づいて分かってきたが、確かに魔法は壁の上から下に撃つだけではなく、下から壁や上にむかって飛んでいるものも見える。
「残った部隊で障壁を張って耐えてますが…そこまで長くは持たないでしょう」
「見込みは?」
「聞いた話だとあと十分程度です」
ニケの足がさらに加速する。これならあと五分弱で都市に着くだろう。
「なるほど。で、俺か」
「すみません、レィアさんなら魔法を無力化出来ると思い出して…」
「確かに出来るだろうが…だが今回ばかりは先に言っておく。今寄生虫にやられている奴は殺すしかないぞ」
出来ることなら殺したくはない。だが、現状寄生虫に対しての情報が少なすぎる。加えて、放っておけばその分都市や周りに被害が及ぶ。
あるかどうかも分からない「助かるかも」で徒に戦闘を長引かせ、危険に自ら立ち入るような事をしている余裕はない。
「……えぇ。僕も、ガロン大隊長もわかっています。今、一番リスクが少ない方法を取る。そうするのが一番いいと」
そこでニケはもう一段階速度のギアを上げた。
「けどお願いします!レィアさん!あの人達も生きて助けてください!虫にやられている人達もまた都市の人、僕達の護る対象です!」
「…そう言うと思ったよ。なら、後で報酬を要求させてもらうぞ」
「構いません。僕達がなんとでもします」
「言ったな?覚えとけよ」
これで都市長の話も少しは進むといいんだが。あぁいや。
まずは依頼を先に終わらせよう。じゃなきゃ話にならん。
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