大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

欠片と行方

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それはそれとして、とりあえずアベルを埋め直したので、切り株も元通りにして、森の外へ向かうことにする。
最初、ヤツキに顔を見せにでも行こうかと思っていたが、どうせまた後日ここに来るのだからと思ってやめた。ここに来るつっても、そんなに大した話じゃないのだが、まぁ再び来るのは確実なので置いておく。
とりあえずは最初に荷車を置いた場所に向かうか。ニケが来る時もそっちの方がわかりやすいだろうし。
ニケの足だとここからプクナイムまで、全力でおよそ十分から十五分。往復だけでもまぁざっと三十分弱か…報告含めるともうちょいかかるだろう。
一方俺はアベルを埋める作業で大体三十分以上一時間未満ぐらい時間を潰した。流石に魔獣の処理をしなくてはならないだろうから、こっちに来るのはもっと遅れるだろうが…まぁ、やることも無いし、早めに戻れるよう元の場所に行っとこう。
来た道をのんびり歩きながら、久しぶりの森の歩きにくさを実感しながら戻る。
ヒトが踏みしめて均した訳ではない上、木々の捻くれた根や地中から中途半端に出ている石のせいで足元が安定しない。
草陰に小さい蛇や蛙系の魔獣がいるかもしれない。そういう奴らは大概毒を持っているので、絶対に触れないようにしなくてはならない。
「………ん?」
『どうした、レィア』
「いや…」
…あれ?この辺だよな?
『まさか迷ったとか言うなよ?ここは自分の庭みたいなもんだろ?』
「いや、迷った訳じゃなくて、人形の欠片が…見当たらん」
『うん?』
多分ここら辺…いや、間違いない。
ニケが目印に残した独特の足跡と、人形と戦ったために抉れた地面。ここらにはその残骸があったはずなのだが見当たらない。
『風か虫が運んだ訳…じゃ、ないな』
「ない、な」
木の葉の下や根の陰を探しても無い。
そもそも風が運ぶには重すぎるだろうし、ほぼ木で出来ている人形を虫や魔獣が運ぶ理由は無い。
なんだ、すげぇ嫌な予感がする。
『他の場所はどうだ?何ヶ所かニケが戦ってたろ』
「…行ってみる」
予定を急遽変更、先程回った戦闘痕の場所へ行ってみる事に。
しかし案の定、人形に使われていた武装やボディは欠片も残っていなかった。
「…あんなボロい人形を誰か集めてる?」
『理由がわからんな。あそこまで壊れた人形はお前ぐらいしか直せんだろ』
「俺でも完璧には無理だな。掻き集めりゃ余程の手間がかかるが、一体程度どうにか出来るかもしれんが…そうするなら新しく一体作る方がよっぽど楽だ」
そもそもそこまで器用な奴なら、という前提がつくが。
『現状は誰が集めたのか全く不明か』
「一番ありそうなのはヤツキが片付けた、だな。同時に一番ありえない気もするが」
『ま、そもそも普通はこんな森の外れに来ないし、人形の欠片があっても気づかないか、大きいのを幾つか拾う程度だろうしな』
…結論を言うならやはり分からん、だな。
『マスター・メッセージです』
「繋げ」
『了解・しました』
森の中にいるのに届くメッセージなんぞニケがこちらに向かいながら飛ばしてるに決まってる。
俺はすぐにメッセージに出た。
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