大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,431 / 2,022
本編

会議室と出発

しおりを挟む
俺の言葉に、ガロンは渋々ながら首を縦に振った。
「本当に申し訳ない事になる。他所の都市からの客人だと言うのに、この都市の迷惑をかけてしまうとは」
「何度も言うが、俺は別に構わねぇよ。この都市にゃ世話になったし、かけた迷惑が無いわけじゃないしな」
たった二回しか来たことがないのに、良くもまぁこんなにも色々とやらかしたものだと我ながら思う。
「しかし、君一人と言うのは流石に問題がある。警備隊ウチからも一人つけよう」
「別にいらねぇよ。勝手知ったる場所だし」
「はっはっは。ワシらに気を使ってくれるのはありがたい。だがそういう訳にもいかんなぁ。ワシらとて外聞というものがある。客人を一人、あの森へ弓矢のようにひょうと放り込んでは面目が立たんのでな。おいニケ、行けるな?」
「はっ!勿論です!」
「そういうこった。聞けば多少は顔を知ってるんだろう?気軽に使ってくれ」
「気軽に使えって…まぁ、お前ならいいか」
しかし、紅の森をなんとも大袈裟に言うものだ。
ナナキの人形も、既に彼女がいなくなった事で同時に活動を停止しているはずだし、ヤツキがキチンと魔獣を押し止めている限り、そこまで恐ろしい場所ではないはずなのだが…ま、普通は一回危険だと知ったら立ち入らないか。
「んじゃ、とっとと行ってくるわ。ニケ、支度はどんだけで終わる?」
「十分で済ませます!」
「おーけー、ならこの建物の入口ン所で待ってる。終わったらそのまま森に行くぞ」
「あれ?レィアさんは?一度宿に戻らないんですか?」
「俺はロクなモンもってないしな。このままで充分だ」
わかりました!と言うセリフすら置き去りにして、ニケが風のように部屋を出ていった。本当に騒がしい奴だと思っていると、ガロンが声をかけた。
「もう行くのか?」
「だって早いほうがいいだろ?昨日…じゃねぇわ一昨日だわ。一昨日、俺が相手を殲滅したから多少はマシだろうが、報告聞いてたら結構ヤバいよな。なら、さっさと終わらせてくるわ」
紅の森の中なら文字通り俺の庭だ。半年ぶりになるが、大きく地形が変わったり、ヤツキも変な所に即死級のトラップを置いたりはしないだろう。
ならきっと、目標は結構すぐに見つかるはず。
「…君は本当にあの森のことを知っているのか?ハイキングで行くような場所ではないんだぞ?」
「ははぁ…ニケから聞いてない感じ?」
「なんの話だね?」
「俺の出身はその紅の森だよ。十五年以上そこで過ごしてきた。アンタらよりかはずっとあそこの事を知ってるぜ」
さて、あとはやることは無いか。
「んじゃ行ってくる。万が一、いや、兆が一、二日ぐらい連絡もなんも無かったら死んだと思ってくれ。まぁ、そうそうありえないだろうが」
そう言って俺は部屋を出る。
さて、どこを探そうかね。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...