大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

説教と目的地

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アーネが焼いた大地は高熱で、渡ることすら困難なレベルだったが、そこは流石ニケ。俺をおんぶして超加速、走り幅跳びの要領で大ジャンプし、門の上スレスレを通って地面に着地した。
んで、今。
「ねぇ?お前馬鹿なの?ふざけてんの?」
「申し訳ありませんわ…」
大説教中。
「何アレ。しかも魔力足りなくて周りの警備兵さんから魔力貰ったって。それ軽く大魔法なんじゃねぇ?そんなのを俺達がいる場所目掛けてぶち込んだの?何?俺達諸共殺す気なの?何なの?挙句魔力貰った警備兵さんの半分がぶっ倒れてたんだけど。地面も盛大に抉れてたし、魔獣の死骸もぶっ散らされたし、壁もかなりダメージ受けてんじゃん。主にお前の馬火力で。こんなの、後処理の方が大変じゃん」
ちなみに場所は馬車の中。
あの後、ひとまず昼食を食べたあの店まで戻り、馬を馬車につけると、ニケが「僕が御者になって案内しますので、お二人は中で休んでてください!」と言い、俺達を馬車の中に入れたのだ。
ちなみに、その時のニケの表情から「泣くぐらい説教してやってくれ」的な意味が汲み取れたのは絶対に気の所為ではない。
そんな訳でずっと馬車の中で説教タイムが続いている。
ニケがわざとなのかどうか知らないが、馬車をゆっくり進めているらしく、中々目的地につかないようで、それに比例して説教も伸びている。
「普通に考えたらお前が指名手配されてもおかしくねぇんだけど?都市からしてみろ。地面を盛大に抉った上に警備兵の半分を使い物にならなくして、挙句防御の要である壁を弱らせるって。これお前が出なかった方がよかったんじゃね?」
「そんなはずありませんわ!証拠に魔獣は一掃して──」
「一掃したけど、後片付けは増えたよな。逆に」
「申し訳ありませんわ…」
まだなじってやろうと口を開きかけた所で馬車が止まったらしい。
「レィアさん、そろそろおしまいにしてあげましょうよ!目的の宿につきましたよ!」
「…まぁ、ニケがそう言うならしゃーねぇか」
一番被害を受けているのは多分コイツだしな。
独断で客人を戦線に放り込んだ挙句、そいつが大問題起こしたってなれば、どいつに責任が行くかってのは自明の理。
俺が説教をしていたのは、単にニケが怒るのが苦手だからだろう。コイツが怒るところなんか想像がつかん。
ニケに言われて外に出ると、そこには結構立派な宿が。
……ふむ。
「なんとなーく、さ。こういう結構豪勢なの見るとさ、ついつい壊したく…」
「絶対にダメですわよ?」
「もちろん」
どこぞの学校のどこぞの扉みたいな事はしませんとも。えぇ。
だって。
「この都市じゃ一回やってるもんなぁ…」
視界の右端でニケが苦笑したのが。左端でアーネが口をあんぐりと開けたのが見えた。
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