大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

都市と麦

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ニケがそう言うと同時に、黒い重厚な壁が唸り声を上げて開く。
普通、住民や旅人は第三都市から第二都市への門しか使わないので、この門が開くのは結構珍しい。
ちなみに俺達がなんでわざわざ外側から直にプクナイムに入ったのかと言うと、理由は単純。
そうすると王都から第一、第二都市を通って第三都市に行かねばならなくなるためだ。
妖精種フェアリーの領土はその全てが非常に高い壁で囲まれており、門の数も少ないので中々に面倒なのだ。
理由はまぁ、過去にちょっとしたトラウマがあるかららしいのだが、詳しくは知らん。
あぁ、ついでに言うなら、他の都市はここまでガッシリと壁を作ってはいない。精々が一番外側の都市だけだろう。
いや、行ったことないから詳しく知らんが。
さて、中に入ると、前に来た時と大きく違うものが。
それは、視界いっぱいに広がる麦畑。
今は六月、そろそろ収穫の時期ということもあって、綺麗な穂を実らせていた。
どこの領主が治める土地でも、外側の領土は、広さ故にそのほとんどが食料のために畑だとか牧場になっていたりする。
そしてそれはここ、プクナイムでも同じ。
ここはこの国のほとんどの麦を作っている。
前来た時はそうでもなかったが、収穫シーズンのため、全く違う様子を見せていた。
「どうですか?すごいでしょう!」
「おー、初めて見たわ」
まぁ、ここ以外じゃ麦なんてほとんど作ってないから当然だけど。
しかし、そんな適当に返した返事でも、ニケは嬉しそうに笑った。
「そうでしょうそうでしょう!プクナイムの名産としては、この小麦から作るパンなどもまた格別ですよ!」
「知ってるよ、そりゃ。…俺達の目的は聞いてる?」
確かにすごい事だが、それは後から。
なんせこっちはあと三日程度で何も知らない相手をさがして捕まえ…じゃねぇ、保護しなきゃならん。
幸い、都市も手を焼いているってんなら、ある程度は情報を持ってるはずだし、くれもするだろうから、まずはニケに──。
きゅくぅぅぅぅぅ…。
「……」
「……」
「お、お腹が空きましたの…」
俺の思考を断ち切ったのは、顔をこれでもかと真っ赤にしたアーネの空腹を訴える音だった。
「……そういや、飯がまだだったな」
忘れていた訳では無い。ただ、もう少しぐらい後でもいいかな、と思い直していた。
が、しかし、そんな余裕、アーネには無かったらしい。
大食漢(いや、女だけど)のアーネからすると、どうもパンが美味いって話だけで腹が鳴る話題だったらしい。
「……ニケ、悪いけどなんか飯食える所ねぇ?話はそこでしようか」
すると、ニケは嬉しそうに笑った。
「もちろん!それではこちらです!」
まぁ、腹が減っていたのは間違いないからな。
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