大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

蜘蛛と用件

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蜘蛛に抱えられ、そのまま約五分間、巨大蜘蛛が天井を走って行くのに、誰も気づかないのな。いや、足音すら無かったからまぁ分からんでもないんだがな…。一人ぐらい気づいてもいいんじゃないかなぁ…。
んで、運ばれた先は──。
「え?学長室?」
最初と比べて随分質素になった扉の上のプレートには、間違いなく《学長室》と書いてある。職員室じゃないのか。
蜘蛛は八本もある手(足?)で器用に扉を開け、その中へ入っていく。
中にいたのは当然、学校長と。
「シィルさん、復帰おめでとうございます」
「あれ?クードラル先生?あぁ、ありがとう」
「今、その糸を解かせますね」
そう言ってクードラル先生が指をパチンと鳴らすと、蜘蛛が器用に俺の糸を解いていく。…ってか、早い早い早い!!
蜘蛛は馬鹿みたいに高い天井に張り付いたまま。当然、抱えられた俺はそこにいる訳で、わずか二秒で糸を解かれた俺は。
「ぬゅうううう!?」
当たり前に落ちた。それも逆さまに。
だがしかし、俺は空中で身体を捻り、見事着地。身体が若干痺れたが、まぁ許容範囲だな。
「なぁにしやがるクードラル先生?こちとら怪我人だぞ」
「怪我人にそんな反応は出来ませんよ」
さっきから黙ったままだった学校長が口を開いた。
「どうやら快復したようですね。クードラル先生、ありがとうございました」
学校長がそう労うと、クードラル先生は一礼してあの蜘蛛と一緒に部屋から出て行ってしまった。
…先生、何しにここにいたんだろ?
「さて、レィアさん。とりあえず快復おめでとうございます」
「おう、アーネ曰くまだ完治じゃないらしいがまぁその辺りの間違いは許してやる」
「………」
「ん?どした?」
「いえ、なんでもありません」
そう学校長が言うと、学長室の奥にある執務机…とでも言うのか?そこに行き、椅子に座った。
「んで、用件は?」
俺は手近にあったソファ……ではなく、そのすぐ隣のテーブルに腰を下ろす。
「………」
「ん?どした?」
「いえ、なんでもありません」
溜息をついてそう言う学校長。
まぁ、俺は敢えてやってるから、分かっててもやめねぇけど。
「レィアさんが怪我をして暫くはあなたにコンタクトが取れませんでした」
「…あぁ、アーネか」
「はい、彼女に完治してから来るように、と追い返されました。ので、あなたが学校に来れる程度に回復するのを待っていました。先にお願いを言います」
「あん?いやまだ快復は──まぁいい、言っちまえ」
「あなたに、東の都市、プクナイムに行ってほしいのです」
……げ。
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