大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

質疑と暗所

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「………?」
「どうかしたカ?」
んー?ちょっと待てよー?
もしかして、なんかどっかで勘違いした?
「お前がカイル先生から血を受け取ってたんだよな?」
「アァ」
「シエルの血だな?」
「幼い半魔族の血だナ」
「シエルだな。それを研究か素材か知らんが、利用してるんだよな?」
「そうダ」
「で、シエルをこの研究所のどこかに隠した」
「それは知らン」
……んー?
………。
んー…よし、オーケー。
「嘘ついてると暴れんぞ。今度は賭け値なしのガチ本気だ。なんなら研究所全部を消し飛ばしてやる」
「待て待テ。嘘は言ってないゾ。確かに隠してる事が無いわけじゃないが、それでも少なくとも私はそのシエルという半魔族がどこにいるか知らなイ」
「はー?本当かぁ?シラ切ってんじゃ無いだろな」
「本当ダ。そもそも私はミソッカス扱イ。ロクに研究に参加出来ないし、私に聞くのが間違ってるナ」
そう言って腕を組んで開いた扉のへりに背をよりかける。
「ンな事知るかよ…お前ら何人いんだよ」
こちとら研究所の面子で顔と名前がなんとなくでも分かるのだって五人いないんだぞ。
「五十五人だナ。所長も入れるとプラス一人ダ」
「多くね?いや少ないのか…?」
「人手が足りなかったら増やすから問題は無いナ……ん、ちょっと待っててくレ」
ピィがそう言って耳元に手を当てる。俺に背を向け、独り言をボソボソと言う。メッセージだろうか。
…さっき俺を見るなり襲いかかってきたんだよな、こいつ。出会い頭に人の頭を掴んで、膝を複数回叩き込むとかいう殺意の高い攻撃をしてきたのに。それが今はうってかわって質問には全部答えてくれている。非常に協力的…なのかどうか分からないが、少なくとも殺人的な蹴りは無さそうだ。
「よし、悪かったナ。行こうカ」
「あ?どこに」
「ほら、お前が使ってた銀の流体鎧があっただろウ?」
「マキナか」
「そう、そレ。それを調べたいって私の友人が頼んで来たから貸したんだヨ」
「人の物を勝手に貸すな」
「沈黙は肯定だゾ」
「そもそも意識がないだろうが…で?」
「で、もう調べ終わったから良いってサ。取りに来いって言ってル」
「挙句取りに来させるのか。とんでもねぇ奴だな」
「常々思うヨ。が、優秀なのは間違いなイ。お前も来るカ?」
「当たり前だ」
「わかっタ」
と言ってピィは部屋の方へ向かう。
「あ、おい、どこに行くんだ」
「だからその流体鎧を取りに行くんだろウ?こっちダ」
と言って部屋の中央付近へ行くピィ。後を追う俺。
「ここダ」
バガン!と凄まじい勢いで蹴飛ばした床の下には暗い空間と階段。下に続いているのか。
「今更だが、暗い所と狭い所は大丈夫カ?」
「まぁ」
「じゃあ行くゾ」
一言呟いてピィが魔力の明かりを浮かべ、進み始めた。
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