大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

象徴と収拾

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「ちょ、ちょっと待ってくださいまし?」
アーネがあわあわと確認する。
「えっと、私もその事件のことは知ってますの。というか、歴史書にも載ってますし。けど、両家の剣が王族に取り上げられたなんて話、聞いてませんわよ?第一、なんで王族はまたそんなことを?」
「おいアーネ、お前馬鹿?」
『レィア、この子結構頭悪い?』
おぉ、俺が思った事とシャルが言ったことがリンクしたか。
いや、そりゃどうでも良くて。
「普通に考えて、自分の首狙ってる奴らの手元に武器を…それも強力なのをわざわざ置いとく馬鹿がいる?今までは信頼やらしがらみがあったかもしれんが、叛逆されて『おう、別に構わんよ』とは普通ならねぇだろ」
だから。
その象徴でもあった宝剣を取り上げた。
「けど、私達はそんなこと知りもしませんし…」
「だからさ…いくら国の大貴族だからって叛逆を起こして、その処罰がないってのはおかしいと思わねぇ?」
まぁ、実際には主犯の首を刎ねたりはしたらしい。らしいが──。
「王の命は私達大貴族、貴族、平民、その他、ありとあらゆる命より重い」
ついにルトが口を開いた。
「その命を狙ったのだ。本来は滅ぼされてもおかしくはなかった。しかし、それも出来ない」
王族は武器を持てない。
だからこその、それを護る剣の一族、盾の一族。
その武器一族を捨てる、というのは──流石に無理がある。
ならば、それに見合った物を取ろう。
「だから、宝剣を取り上げた、だろ?」
その言葉に、ルトは沈黙で返した。
そして宝剣は──大貴族の命全てよりも重かった。
「そういう訳で、両家から宝剣と呼ばれた剣は全て王家の手の中に。ただ、他の貴族がその事を聞くと反乱やら何やらで面倒がさらに起きそうだったんだろ?だから多分、宝剣ってのが元々どんな扱いされてたのか、祭壇にでも飾ってあったのか物置に放り込まれてたのかは知らねぇけど、今はレプリカにでもすり変わってるんじゃね?そんな大層な宝剣が三十年近くも無いまんまじゃ、流石に民衆が気づくからな」
『なるほどな…だからルトはその剣を取り戻そうとして、今回の事が起きたのか』
最後まで話を聞いたユーリアが、満足そうに頷き、「素晴らしい!百点満点だ!」と答え、だが──、と繋げる。
「ここまでが私達が把握している話だ。ここから先は私達でもわからない」
「あん?」
ユーリアがゆっくりと俺を指差す。
「なぜ、レィアがその剣を──しかも両方持っている?」
まぁ…そうなるわな…。
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