308 / 2,022
本編
竜と銀剣 終
しおりを挟む
増幅魔法が俺の身体全体で弾けると同時に、身体から湧く力が一気に増した。
血呪を増幅魔法で強化した結果、さらに強い強化が身体に施されたのだ。
「どこだ!?」
俺の声に即座にシャルが答える。
『喉元だ!』
きっ、と睨むと、俺を見下ろすルトと目が合う。が、俺が探してるのはテメェの爬虫類じみた眼じゃねぇ。
目を凝らすと、はたしてそこに──。
「見えたッ!!」
あった。
たしかにあった!
逆に生えたことにより、僅かに他の鱗と競り合い、押し上げられる形になった逆鱗が他の鱗と比べてやや歪に輝いていた。
『いけるか?』
「いけるかどうかじゃねぇだろ」
やるんだよ。
軽く地面を蹴ると、弓矢のように俺の身体が飛び出す。
ルトは真っ正面から挑んできた俺に驚いたのだろうか、それとも、身体中何百枚もある鱗、その中からたった一枚だけある逆鱗を見つけられたと気づいたのだろうか。
いずれにしても、目を見開き、身体を翻しつつ、さらに細くしなった尾で迎撃してきた。
正面から繰り出された鋭い一撃は、相手がなにかするまでも無く俺が水から近づくことによってその距離を即座に食い潰し、俺の眼前に現れる。
それを俺は。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
身体を捻り、迎撃。脇腹から逆の脇腹まで引き裂くような痛みが走るが止まらない。
勢いを加算した右の金剣を上から振り下ろし、ギャン!と音を鳴らしながら止まることなく突き進む。
『残り五秒だ』
弾かれた尾に驚いたルト。咄嗟に振り返るが──それが、ルトからしたら最大の悪手で、俺からしたら。
「最ッ高の好機だ」
右の金剣、左の白剣を一際強く握る。
最高のチャンスだが、最後のチャンスだ。
連撃が多い俺の戦技で、単発の戦技かつ、最も威力が高い戦技。
連撃の極地が過去魔人戦で見せた連戦技の最後の戦技、《終々》ならば。
これは双剣でありながら単発の極地。
俺の物理的力不足を補う戦技。
「《音狩》」
その戦技は、過程を残さない。
両方の剣を振りかぶり、次の瞬間には振り抜いている。
刻まれる斬撃痕はさほど大きいものではない。
しかし、その一撃は、必ず対象物を切断、もしくは破壊する一撃。
その一撃が砕いたのは──。
『見事、よくやったよ』
──狙いの逆鱗。
薄いガラス細工を砕いたような、心地いい音をしながら逆鱗がキラキラと光りながら散っていく。
俺は落下しながら、ルトが声にならない声を上げながらみるみる小さくなっていくのが見つつ、届かない銀剣に右手を伸ばし──意識を失った
扉の方に赤い髪の誰かと紫の髪の髪の誰かいた気がしたが、血を失いすぎた目ではよく見えなかった。
血呪を増幅魔法で強化した結果、さらに強い強化が身体に施されたのだ。
「どこだ!?」
俺の声に即座にシャルが答える。
『喉元だ!』
きっ、と睨むと、俺を見下ろすルトと目が合う。が、俺が探してるのはテメェの爬虫類じみた眼じゃねぇ。
目を凝らすと、はたしてそこに──。
「見えたッ!!」
あった。
たしかにあった!
逆に生えたことにより、僅かに他の鱗と競り合い、押し上げられる形になった逆鱗が他の鱗と比べてやや歪に輝いていた。
『いけるか?』
「いけるかどうかじゃねぇだろ」
やるんだよ。
軽く地面を蹴ると、弓矢のように俺の身体が飛び出す。
ルトは真っ正面から挑んできた俺に驚いたのだろうか、それとも、身体中何百枚もある鱗、その中からたった一枚だけある逆鱗を見つけられたと気づいたのだろうか。
いずれにしても、目を見開き、身体を翻しつつ、さらに細くしなった尾で迎撃してきた。
正面から繰り出された鋭い一撃は、相手がなにかするまでも無く俺が水から近づくことによってその距離を即座に食い潰し、俺の眼前に現れる。
それを俺は。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
身体を捻り、迎撃。脇腹から逆の脇腹まで引き裂くような痛みが走るが止まらない。
勢いを加算した右の金剣を上から振り下ろし、ギャン!と音を鳴らしながら止まることなく突き進む。
『残り五秒だ』
弾かれた尾に驚いたルト。咄嗟に振り返るが──それが、ルトからしたら最大の悪手で、俺からしたら。
「最ッ高の好機だ」
右の金剣、左の白剣を一際強く握る。
最高のチャンスだが、最後のチャンスだ。
連撃が多い俺の戦技で、単発の戦技かつ、最も威力が高い戦技。
連撃の極地が過去魔人戦で見せた連戦技の最後の戦技、《終々》ならば。
これは双剣でありながら単発の極地。
俺の物理的力不足を補う戦技。
「《音狩》」
その戦技は、過程を残さない。
両方の剣を振りかぶり、次の瞬間には振り抜いている。
刻まれる斬撃痕はさほど大きいものではない。
しかし、その一撃は、必ず対象物を切断、もしくは破壊する一撃。
その一撃が砕いたのは──。
『見事、よくやったよ』
──狙いの逆鱗。
薄いガラス細工を砕いたような、心地いい音をしながら逆鱗がキラキラと光りながら散っていく。
俺は落下しながら、ルトが声にならない声を上げながらみるみる小さくなっていくのが見つつ、届かない銀剣に右手を伸ばし──意識を失った
扉の方に赤い髪の誰かと紫の髪の髪の誰かいた気がしたが、血を失いすぎた目ではよく見えなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
233
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる