大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

鵺と戦闘2

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絶え間なく続く鵺達の爪と牙の攻撃。
それを俺はかわし、黒剣ではじく。
激しい。かなり激しい。…が。
「魔獣との戦いは飽きるほどやったしな…」
全て過去に受けた事のある攻撃だ。
『魔獣と戦う勇者ってのはめずらしいな。普通、勇者ってのは魔族とかと戦うもんなんだが…』
へぇ、そうなのか。
こんな話をしていても、当然戦闘はつづいている。
ほら、鵺が真っ正面から突っ込んできた。これは…殺るっきゃないでしょ。
俺は左の黒剣を軽く放り投げ、一本だけ握る。
「《我断がだん》」
右の黒剣を両手で握りしめ、大上段から地面まで一気に振り下ろす一撃を放ち、直後に落ちてきた左の黒剣を掴み直す。
チッ、外したか。
鵺は戦技アーツが当たる直前に身体を捻り、前足一本と引き換えになんとか生き残ったらしい。流石の俊敏さだ。
『馬鹿!後ろ!!』
知ってるよ。
後ろから二体、喜んで突っ込んできてやがる。
両方の黒剣を逆手に持ち、しゃがみこんだその体勢のまま……。
「《顎屠あぎと》」
その場で小さく、コンパクトに地を蹴り、空中で前転。地面に手をつける。
曲芸と違うのは、俺の両手に黒剣が握られており、それぞれの剣が鵺の下顎から上顎へと突き抜け、黒剣が楔となり、一緒に地面に縫い付けられていること。
鵺は二体とも腹を上に向けたまま藻掻もがくが、身体の構造上、黒い楔が邪魔をして、どうしても起き上がれない。
あと、黒剣の能力もあるから、抜けることも無い。
出来ればトドメを刺したかったが、目の前にはまだ敵がいる。それも…かなり強力な個体が。
「残り…二体。いや、一体?」
足を斬った個体は…もう無理か。
しかし、残り一体は恐らくリーダー格。
他の個体より重く鋭い攻撃を繰り出す。
多分、今この二体にトドメを刺せば、その隙に殺られる。
金剣を取り出すと、即座に詠唱を始める。
「『この身は揺るがぬ壁となりて
この手が握るはその誓い』」
今回は征断を使わない。万が一、もしもそれを狙って爪や牙じゃなければ取り返しがつかない。
「『望むは誓いの姿なり』」
『ーーッ!』
鵺のリーダーが吠えながら突っ込んで来る。
さて。
爪か、牙か、それとも。
「『その姿は彼の者を護る、唯一にして絶対の守護者である』」
相手が繰り出してきたのは。
毒のブレス。
「やっぱりな!!」
アーネ達が戦った個体は毒袋を取り除いてあったらしいが、リーダーまで用意するのだから、やはり毒袋を取り除いていなかったのだろう。
毒々しい色をした猛毒の霧が俺へと襲いかかってくる。
けど。
毒が俺を飲み込む直前、飛び出た白剣が猛毒を切り裂き、そしてそのままリーダーの脳天、そのド真ん中に突き立った。
「これでしまいだ」
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