大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

帰路と客

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「じゃあ。ウチの娘もよろしくね」
と言って放り出されたのは俺が気を失った辺り。
「あぁ」
とだけ答え、特に後ろを振り返ることなく歩き始める。
ふと思って後ろを振り返ると、既にラピュセはおらず、ただ無機質な壁があるだけだった。
さて。
ラピュセ曰く、俺は気絶してから二時間ほどで起きたらしい。という事は単純に考えて現在午後七時頃。いや、なんだかんだあったので八時近いかもしれない。
「………。」
ラピュセ、アーネに連絡とかしてねぇよなぁ…する訳ねぇよなぁ…だって存在自体が隠されてるようなもんだし。どう説明すっかなぁ…
とりあえず部屋に戻ろう。ここで考えててもどうしようもない。
カツンコツンと足音を立てながら、一人寂しく暗い廊下を歩いて自室へ戻る。
「悪い遅れた………って、ん?」
「あ、え、っと、お邪魔してます」
部屋にはアーネともう一人、この前義肢の依頼を持って来たティロと言う少女。
「どうした?作った義肢に不具合でもあったのか?」
だとしたら少し面倒な事になる。材料の大半が無くなってしまっているので、仮に作り直すことになったらもう一度森へ行く必要が出てくる。
「あ、いえ、そういう訳ではなくてですね、その、少しアーネさんに魔法の勉強を…」
「魔法?アーネに?」
「彼女、魔法の構築が遅いんですの。それで班のメンバーに迷惑がかかっていると相談に来たんですわ」
ほー。つまり前衛が時間稼ぎをし終えるより先に力つきてしまう訳か。
と言うかこいつ、魔法使いだったのな。
「まぁ、魔法が発動するまで耐えれない前衛も前衛だがな。どういう班なのか知らんが、流石に魔法が構築し終わるまで耐えれんのはぶっちゃけて下手クソな前衛にも非があると思うがな」
「今日は随分と攻撃的ですわね。否定はしませんけれど、もう少し柔らかく言ってもいいんじゃないですの?それに、二つ名持ちあなたにそう言われても、他の方はそう簡単に出来るものではないと思いますわよ?」
「はっ!自分の力量を棚に上げて、他人の上達を求めるなんざあっちゃならん事だと思うがなぁ──つまりティロ、お前は人一倍頑張って上達せにゃならん訳だ。分かったか?」
「は、はい!」
「才能やスキルの噛み合わせの関係で、どうしてもこれ以上は上手くならないってラインはあるにしろ──どうにかなりそうなのか?」
「えぇ、彼女の場合は魔力の伝導があまりにも遅いですから、そこをどうにかすればなんとかなると思いますわ」
「…?、まぁ、何とかなるようならよかった。ついでにお前の魔法をいくつか教えてやったらどうだ?」
「彼女の魔力と私の魔力が全く別の属性ですから、教えるだけ無駄ですわよ」
意味は正直わからんが、意味が無いということは分かった。
「んじゃ俺風呂入ってくるわ。アーネ入った?」
「もう入りましたわよ。片付けをお願いしますわ」
「へーへー」
ガチャっと脱衣場に入る直前、騒がしい声が聞こえた。
「お、おふっ!?アーネさんレィアさん!え、この部屋って本当にお風呂があるんですか!?」
「そんな事はどうでもいいですから、魔力トレーニングをやりますわよ。ほら最初から…」
「どうでも良くないですよ!いいな…羨ましいなぁ…私も後で入っていいですか?」
…結構図々しいな、こいつ。
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