大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

タッグと連戦3

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共闘と言っても、俺とユーリアは肩を並べて戦った事はあっても、こんな至近距離で互いを助け合いながら戦ったことは無かった。
だが。
互いに刃を交えた回数なら、この学校でもっとも多いのは間違いない。
理解なら、それだけで充分だった。
「はッ!!」
双刃が正面から相手の攻撃とカチ合った。
エネルギーは充分。威力は申し分無し。当然相手は堪らず剣を落とす。
俺がさらに追撃で踏み込むと、文字通り横槍が入る。
糞、流石に三対一はキツい。
流石に先程のように双刃を真正面から受け止めるような者がいないだけ、辛うじて元からの体さばきで何とかやっているような状態だが、ユーリア分の敵を一人多めに引き付けているのだから仕方ないといえば仕方ないが…やはり前の銀剣があればとつい思ってしまう。
しかも、三又の槍を持った女子のカバーでトドメを刺しそこね、同時に女子の背後一直線上に、見たくないものが見えた。
いっそ美しいとまで思える、氷──では無く、冷気で出来た実体のない一角獣。
込められた魔力量は驚く程膨大。おそらく、十人近くの魔法使いが作り出した大魔法だろう。これは流石に魔法返しでも厳しい。
となると防ぐあては彼女しかいない。
「ユーリア!!」
「五秒くれ!」
短刀を魔法と織り交ぜながら切り結ぶ女の相手をしつつ、ユーリアが叫び返し、即座に詠唱が始まった。
「火よりい出てを掻き消す。熾すは始まりの陽となる秘──」
そこから唐突にユーリアの剣戟が激しくなり始めた。
『うっそだろ…?三重…いや、四重略唱…?』
シャルが愕然とした声音でそう呟く。
思わずそれをオウム替えしに「四重略唱?」と言うと、律儀にもマキナがそれに答えを寄越してくれた。
『ひとつの詠唱に対し・異なる音で・同じ詠唱の別の箇所を・詠唱し・詠唱時間の短縮をする・技術です』
『イメージとしちゃ、一個の魔法を四分割して唱えてるようなもんだ。ユーリアは今、口とステップ、右の剣と左の剣で別々に詠唱をしてる』
詠唱ってのは声じゃなくてもいいのか。と言おうと思ったら、前にユーリアがライナと戦った時、呼吸音で魔法を詠唱していたのを思い出した。あれは確か韻を踏むとかなんとか言っていたが──
「おっとォ!?」
槍が連続で繰り出され、流石の俺も慌てて回避。
いや、正確に言うならさっきからずっと槍は繰り出されていた。だが、この時から三又の槍が俺のネックレスを掠めとらんと、より一層速度を増した。
「随分と余裕じゃないッ!戦いの真っ最中にッ!考え事!?」
「別に余裕じゃあないんだぜ?避けるだけならなんとでもなるだけで」
「三方向からッ!同時に攻められてもッ!?」
「まぁ、このぐらいならな」
さて。
──今ので五秒経った。
「──《ブレイバード》」
それは俺ですら咄嗟に顔を覆いそうになるほどの熱と光だった。
「何あれっ!?」
『なんだありゃ』
三又槍の少女とシャルがほぼ同時にそう言った。
背後からの攻撃を弾く際、ちらりとユーリアの方を見たのだが、その時見えたのは異常な熱気に包まれた卵。そりゃあんな声も出るわ。
…ん?卵という事は、もしかしなくてもあそこからなにか産まれる──
『あ、ちょっと割れた』
シャルの間抜けな声がしたと思ったら、今までの熱気を遥かに超える熱量が背後で吹き上がり、暴力的なまでの熱風が吹き荒れ、俺とユーリア以外を吹き飛ばしてしまう。
この熱量はあの時のデーモンに近い。一体何をユーリアはしたんだ?
「おいユーリア」
「すまんレィア、ちょっと張り切りすぎた。魔力がほぼ空っぽだ」
「え?あぁ、まぁ…」
そうなってもおかしくないような魔法だしな。
「つまりはお揃いだ」
「何がお揃いだ阿呆。つーか消えてねぇぞあのユニコーン」
今の熱波で多少揺らぎはしたが、逆に言うならその程度。消える様子も何も無い。
「それは今からどうにかなる。向こうの魔法もまだ完成してなかったようだし…それよりほら、今は目の前の…」
「あぁ、さっきの奴らか。ネックレス、取れなかったのか」
一人か二人ぐらい落ちてくれれば良かったのに。しぶといな…
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