大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

退避と爆発

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自爆魔法。
書いて字のごとく、自らを爆発させる魔法の事だ。
俺達は勇者なので元々魔法について詳しくないし、アーネが使ったりすることも当然ないので、詳しくはどんな魔法なのかは知らない。
が、歴戦の勇者たるシャルとレイヴァー曰く。
『あの魔力量的にこれ不味くね?』
『うーん、これ直径一キロぐらい更地になるかな』
「は!?」
一キロも!?言うまでもないが、当然このままここにいれば被爆&即死だろう。
『あくまで実戦に基づく適当な勘だ。魔力量的にそんぐらいって話で…』
だからこそ不味いんだろ。普通に考えて、最低限でもそれぐらいの範囲があると見て移動しなくては。
幸い、デーモンが走りながら追いかけてくる、なんて様子はない。じっと大人しく──いや、あるいは仁王立ちでそのまま死んだような、いっそ美しさを感じるほどの直立不動である。
しかし何故あのデーモンはあそこから動こうとしないのか。こちらからしたら非常に好都合なので別にいいのだが。
「何秒で爆発だ?」
『んー、そうだなぁ』
シャルが呑気にしているうちに血瞬を僅かに使用。怪我など気にしている場合ではないとアーネのいる岩の裏側に急いで回る。
「おいアーネ、そいつの容態は!?」
確認をする前にそう言うと、アーネはこちらへゆっくりと振り返った。
たった十分程度別行動しているうちに、アーネの顔からは明らかに生気が抜けていた。
余程自身の体力を削り、その分一年生の生命力を使わないようにして治療をしていたのだろう。
だが、そこまでしても一年生の容態は良いとは言えないようだった。
「貴方…あの魔獣は…」
「なんとかやった。だが奴が自爆する。すぐにここから逃げるぞ」
「わかりっ、ましたわ…」
ふらふらと立ち上がろうとするアーネを来た時のように抱き抱え、残る一年を髪でそっと持ち上げる。
「お前は休んでろ。がんばったな」
「!」
ついでに、岩陰に待機形態で置いてあったマキナも回収する。
「マキナ!足だ!」
『了解・しました』
出来るものなら今すぐ血瞬で危険域から離脱したいが、アーネと何よりボロボロの一年生が耐えきれるとは思えない。せいぜいが髪と若干冷えてきたマキナによるサポートまでだ。
………で!あと何秒だ!!
『うーん、あれ結構時間的に余裕ありそうじゃない?』
『ん?お、わりとあるな。良かったな今代の』
あぁそうかい!で!?何秒だって!?
『大体二十秒ぐらいじゃない?』
『そこまで余裕はないだろ。せいぜいが十五秒ぐらいじゃね?』
どっちも大差ねぇよ。
「くっ!」
一段階速度をあげる。このペースならギリギリ範囲外に出られる
随分とデーモンから離れたはずなのに、空気の熱が未だに熱い。爆発寸前まで来ているのだろうか。
『おい、デーモンが光ってるぞ』
『魔力が内側から漏れてるのか。うわすげぇな』
『こりゃあれだね』
『あぁー、あぁ、そうだな。おい、今代の』
あぁん!?
『守り固めろ。大至急だ』
シャル達がそう言った瞬間。
轟音と爆風、そして地響きが激しい光を伴って襲いかかって来た。
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