大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

夜明けと外

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結局、嫌な予感がずっとザワザワしていたせいでほとんど寝れなかった。まぁ、最低限の睡眠は取ったので大丈夫だろう。眠いのに変わりはないが、意識をそれなりにしっかりしておけば落ちることはまず無い。
昔、朝に弱かったナナキに聞いた話だと他の人は起きようとしても寝てしまったりすることがよくあるらしいが、その辺はスキルの恩恵で起きるように意識するだけで身体が勝手に目覚める。
思った通りに身体を動かすというスキルは、自身の思った意思が最優先されて身体が動くので、こういう時は便利だ。
え?寝てる時の防衛反応?ありゃほぼ例外。身体が意志を持つレベルになるまで叩き込まれた、言わば本能のようなものだ。そこにスキルが結びついただけ。
閑話休題脇道に逸れた
ともかく、一年生達もそろそろ出るらしい。俺達も起きねば。というかアーネを起こさねば。
ちなみに昨晩の寝床はテントの外、布団替わりの自身の髪にくるまって寝た。森ではよくあった。
アーネを起こしてテントから追い出し、テントをワンタッチで片付け、あれこれよく考えたら箱から出してるから俺達じゃ自力で片付けらんないんじゃ?とか気づいたけどもうどうしようもない。
もしかしたらこのテント、結界の外に出たら一時的な本部にするためのものだったのかもしれない。
まぁ、今更気づいてもどうしようもないし、追加でテントを背中に背負うぐらいなんてことはない。どうせアーネも前に抱えることになるんだし。
そんな訳で、寝起きでうつらうつらと船をこいでいるアーネを抱えてとっとと移動を開始。
一年生達を乗せた馬車は想定通り十時頃に結界の境界に着いた。今はどうやら諸々の説明を受けているらしい。
さて、今のうちにひと足早く結界を抜けておこうか。
札を使って結界の外に出、発信器がちゃんと働いているかどうか確認する。
手のひらサイズのガラス板のような魔導具の表面には、薄らと緑に輝く点が三つ、比較的近くに固まっているのが見える。これがきっと例のチームの代表者達なのだろう。学校側がなにか目印になるアイテムでも持たせているのだろうか。
なんにせよ、発信器は上手く作用しているらしい。これで彼らを追える。
…ん?でも待て。よく考えりゃ結界の外では内側への干渉をほぼ全て完全にシャットアウトするはずだ。なのにこの発信器だけは反応するのか。
………。
まさかコレあれか。一年生ももう結界の外にいるのか。
おかしいな、ついさっきまで説明を受けてたはずなんだが。
そう思っても厳然としてある事実は変わらない。
「ん?」
「ふぁ…どうしたんれすの?」
発信器の示すマーカーの色が緑から赤に変わった。
赤は確か交戦中の色。そしてそれが三つ、固まった位置のまま同時に赤くなった。
「早速交戦したか」
運の悪い一年達だ。だがなんにせよ、俺もそちらへ向かわねばならない。
「飛ばすぞ、アーネ」
ぐんと加速して一年達の方へ向かう。
距離にして一キロも無いのだから、そこまで急がなくても大丈夫なように感じる。
が、ここは結界の外。魔獣の強さも内側と比べて格段に強い。
舐めてかかってパーティ壊滅、なんてことは有り得そうで笑えない。
潰されてなけりゃいいんだけどな。
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