大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

捜索と通信

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アゼロスを探す事が決まったと言っても、たった二人で馬鹿みたいに広い荒野を宛もなく探したところでアゼロスが見つかる可能性は限りなく零に近い。
ユーリアがあまり事を広めたくないと言うので仕方なく二人で外を探し回っているが、正直どの方角へ行ったのかすら分からない状況では俺もほぼお手上げ状態だ。
そして今は真夜中。暗いと言うのは何かを探すという事においてはマイナスでしかない。
そして探す側が二人しかいないのも問題だ。俺とユーリアの二人だけで探すにも限界がある。
いや、厳密には俺とユーリアだけじゃない。
実はどうしてもお願いがあって、アーネにも起きてもらって手伝ってもらっている。
が、この場にはいない。と言うか、アーネは寮から出ていない。
理由として、アーネを真夜中に叩き起してもほとんど使い物にならないということ、そしてもう一点、欲しかったのはメッセージの中継地点としての役割をする人が欲しかったからだ。
俺とユーリアはそれぞれ南北に分かれてアゼロスを探している。当然互いの距離は探索範囲を広げれば広げるほど離れるし、そうなればメッセージも届かなくなる。
そのため、中心点である寮のアーネがメッセージを取り次ぎ、その内容を相手に伝えるという作業が必要となる。これぐらいなら寝惚けアーネでも出来る。
あとはもしアゼロスが自力で帰ってきた場合に、すぐ連絡できるように人が欲しかったというのもある。
そういう訳でアーネをユーリアの部屋に残し、二人で何も無い荒野を探して探して探し続けている訳だ。
既に俺が外に出て二時間ほど経つ。何度かメッセージを送ったり送られたりしているが、結果は互いに芳しくないようだ。
と、その時、アーネからメッセージが入った。
『くぁ……ユーリアから報告ですわぁ…』
「頼む。あと寝落ちするなよ」
『もちろんですわよぉ…』
そこで一度途切れ、五秒ほど空白が生まれる。
「寝るなよ!アーネ!気張ってくれ!」
『にゅふぅ…分かってますわぁ…えっと、ですわね…』
やっぱりマキナを半分ぐらいユーリアの部屋に残しておいた方が良かっただろうか。
『魔法で遠視しながらかなり探したらしいんですけどぉ…全然見つからないらしいですわぁ…』
「了解。引き続き頼んだぞ」
クソ、やっぱり無理があるって。俺だって緋眼を使って視覚強化、マキナを下半身に装備して脚力強化、緋眼を転写したマキナを幾つか遠距離に飛ばして探してもまだ一つも成果が上がっていない。
どうする、範囲が広すぎて手に負えない。ハナから分かっていたことだが、やはりと痛感する。
これ以上マキナに緋眼を転写すると質が落ち過ぎる。かと言って素の眼だと効率が悪すぎる。
そしてこの夜はおかしい。気味が悪い。
いつもならもう何十体の魔獣と遭遇していてもおかしくない。と言うより、そうなっていなければおかしい。
なのに今夜は一体も会わない。それどころか見かけもしないし、足跡のような痕跡すら見当たらない。
明らかに異常だ。ましてやこちらは結界の境界線付近。結界をすり抜けた小物が群れをなすのは当たり前だ。
が、いない。
「………。」
嫌な予感しかしない。
『!!』
「?、どうした?」
驚きの反応をしたのは珍しいことにマキナだった。
『マスター・緊急事態です。探索用の私が一体・反応を断ちました』
「なっ…」
俺が緋眼を転写して作り出したマキナは大きさ約五センチ四方ほどの大きさの欠片だ。
それがかなりの速度で飛び回り、見てきた情報をマキナに送っていた。
当然マキナは鎧になるため、金属で出来ている。それも槌人種ドワーフによって鍛え上げられた特殊な合金だ。
かなりの速度で飛び回る五センチ程度の金属を壊したのか潰したのか分からないが、緋眼の転写や遠距離形態の維持のための魔力すら自己復元に回すような攻撃を何者かからもらった。そう考えるのが妥当か。
『!?』
「次はどうした?」
『他の反応も・次々途絶えて行きます。反応が・途絶えた眼を・直線で繋げると…何者かが・こちらへ向かっています』
「マジか」
言われりゃ遠くから土煙みたいなのが上がってるように思えてくる。
「マキナ、飛ばしてた破片ピースを全回収。出来るか?」
『四機のうち・二機は完全停止・残り二機は・こちらへ向かわせています』
「急げ。間違ってもありゃ友好的な存在じゃねぇぞ」
立ち上る土煙が明らかにヒトが出せるようなものじゃない。
俺は静かにその場で金剣を取り出した。
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