大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,217 / 2,022
本編

食堂と退出

しおりを挟む
ユーリアに「アゼロスを連れて食堂に行くぞ。いい加減会いに来い」と半ばキレ気味に伝えると、弱々しく「わ、わかった…」と返事が返ってきた。
んー、ユーリアってこんな奴だっけ?と思いつつ食堂に着き、三人で大した事ない話を何となく続けながらユーリアを待つ。
が、来ない。来る気配がない。
おかしいな、食堂に行くと伝えて三十分は優に経つぞ。まさかここに来て逃げるとか無いよな?
「さて、そろそろ行きましょう?レィアさん」
「え?あ、そうだな」
俺の腹も膨れたし、アーネの手も止まって結構経つ。特別拒否する理由も無いのでそうとしか言えない。
席を立ち、とりあえずユーリアに文句を言ってやろうとマキナをまた起動した。
(ユーリアに繋げ)、と背中に這わせたマキナに書き込んだ時だった。
「や、やぁレィア、アゼロス、それにアーネ」
いつもの笑みがかなりぎこちないユーリアが、食堂から丁度出ようとしていた所にひょっこり顔を出した。
「よぉユーリア。随分と久しぶりだな。会いたかったぜ?なぁアゼロス」
「う、え、いや、僕は…その…すみません!」
「……なんかフラレたなユーリア。逆の気分はどうだ?」
「…本当に君はやりたい時にこうしてふざけるのだな」
「別に長い付き合いだとは言わんが、短い付き合いだって訳でもないし、そもそも前に言っただろう?それに、俺は嘘が嫌いだし、ついでに言うなら約束を破る奴も嫌いなんだ」
そう言って、じっとユーリアを見つめる。
一秒程沈黙した後、うぐぅと変な声を上げてユーリアが目を逸らした。
…ふむ、本当に彼女らしくない。こういう時こそ笑って返してきそうなものだが。
「んじゃ、俺達部屋に戻るから」
「あ、あぁ。じゃあまた明日ぁッ!?」
ふざけるな阿呆の意味を込めて、思いっきりユーリアのつま先を踏む。
馬鹿野郎、そこはまた明日じゃなくて、俺と一緒に部屋に行こうとしてるアゼロスを引き止める所だろうが。
本当、こういう時に限ってなんでコイツは鈍いのか。
足の激痛のおかげか、それとも俺の限界まで寄った眉間のシワのおかげか、即座に意図を理解したユーリアが、慌てて言い直す。
「おっと、アゼロスはどこへ行こうと言うんだ?君は私の部屋で待っていてくれ」
「え?」
「ほら、私の部屋の鍵だ。さっきは済まなかった。君の事を考えずにああ言った事を言ってしまった。後で話し合おう」
「………っ」
アゼロスからまたグスグスと鼻をすする音が聞こえてきたので多分もう大丈夫だろう。
今度の涙は嬉し涙だろうし、もう俺の出る幕は無さそうだ。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...