199 / 2,022
本編
戦闘と戦技
しおりを挟む
「ふッ!しッ!フッ!」
声を吐くたびに左手に剣を通して伝わる、皮膚と脂肪に覆われた強靭な肉を叩く感覚。
こうしてると、この前馬車に乗って豚型の魔獣と殴りあった事を思い出すな…。
今回もあの時のように、回転しながら剣を振り下ろす。
ただし、前回の時ほど全力ではやらない。
一撃の重さを重視するのではなく、手数を稼ぐ。
左手一本で持った銀剣を、腕を大きく伸ばし、遠心力を加算。そのうえで振り下ろすが、一撃では屠らない。
代わりに、前回の時のようにどこにいるかわからない、なんて事は起きないように、常に空中で身体を捻り、ある程度回転を殺し、見極めて剣を振り下ろしていく。
「シィっ!」
再び手に手応え。
そして、俺が一撃で仕留めなくていい理由が後ろから『飛んで』くる。
ちょうど俺が殴った個体、そいつ目掛けて小さな小さな粒が飛んでいく。
その粒は俺が銀剣で殴った傷口へ見事に当たり、ズブズブと中に入る。そして次の瞬間、牛魔獣の口や鼻、目や肛門すらからも、見るだけで痛そうな棘まみれの蔦を伸ばし、牛魔獣そのものを縛り上げる。
たしか…《ソーン・ウィップ》とか言う上二級の魔法だとユーリアが言っていたな。
恐ろしい魔法もあったもんだ。
しかし、何はともあれ俺からしたら助かるのだから、文句は無い。
「フッ!」
三度手応え。いや、実際はもっと多く叩いているのだが。
そして、その瞬間に、『馴染んだ』という違和感が身体を駆け巡る。
…そんなにやっていただろうか?あぁ、カウントなんかして無かったから分からんが、そう言えばこの戦闘が始まって、そろそろ三十分か。コイツら、延々と一体どこから湧いて出てくるんだと言いたくなるほど果てしなかったから、おかしくは無い…のか?
まぁいいか。名前は…そうだな。
「戦技…」
そう言っただけで、ボロボロな上に疲れきった身体に力が湧いてくる。力が溢れる。
よし、決めた。
「《潰断》!」
生まれて間もない戦技は、名づけられた事が嬉しいと言わんばかりに、白い尾を引き、輝きながら俺の身体を引っ張り、思った以上の威力を叩き出す。
ガッ、ゴッ、と言った音が響いていた荒野に、それらとは全く別種の、バウッ!という音が辺りに響いた。
威力は先程までとは段違い。明らかに高く上がった身体を捻り、下を見てみると、結界と魔族の領土の境まで果てしなく続いている黒の塊…牛魔獣の群れと、スレイプニルが引く馬車が。
俺の戦技の影響か、ポッカリと穴の空いた箇所が。
ゆっくりと重力に引っ張られ、地面に近づいてくるにつれわかった。あの中心にいた牛魔獣はひしゃげ、周りの数体の牛魔獣も吹き飛ばされたようだ。
そこまでの威力。使用に当たっては気をつけねば。
しかし、今はこれぐらいで丁度いい。
再び剣を構え、戦技を撃つ準備をし始めた。
「《潰だ…》ガッ!」
しかし、牛魔獣達に振り下ろす直前、何かが俺の脇腹を強く叩き、俺の目の前は真っ暗になった。
まだ…死なねぇぞ…!
声を吐くたびに左手に剣を通して伝わる、皮膚と脂肪に覆われた強靭な肉を叩く感覚。
こうしてると、この前馬車に乗って豚型の魔獣と殴りあった事を思い出すな…。
今回もあの時のように、回転しながら剣を振り下ろす。
ただし、前回の時ほど全力ではやらない。
一撃の重さを重視するのではなく、手数を稼ぐ。
左手一本で持った銀剣を、腕を大きく伸ばし、遠心力を加算。そのうえで振り下ろすが、一撃では屠らない。
代わりに、前回の時のようにどこにいるかわからない、なんて事は起きないように、常に空中で身体を捻り、ある程度回転を殺し、見極めて剣を振り下ろしていく。
「シィっ!」
再び手に手応え。
そして、俺が一撃で仕留めなくていい理由が後ろから『飛んで』くる。
ちょうど俺が殴った個体、そいつ目掛けて小さな小さな粒が飛んでいく。
その粒は俺が銀剣で殴った傷口へ見事に当たり、ズブズブと中に入る。そして次の瞬間、牛魔獣の口や鼻、目や肛門すらからも、見るだけで痛そうな棘まみれの蔦を伸ばし、牛魔獣そのものを縛り上げる。
たしか…《ソーン・ウィップ》とか言う上二級の魔法だとユーリアが言っていたな。
恐ろしい魔法もあったもんだ。
しかし、何はともあれ俺からしたら助かるのだから、文句は無い。
「フッ!」
三度手応え。いや、実際はもっと多く叩いているのだが。
そして、その瞬間に、『馴染んだ』という違和感が身体を駆け巡る。
…そんなにやっていただろうか?あぁ、カウントなんかして無かったから分からんが、そう言えばこの戦闘が始まって、そろそろ三十分か。コイツら、延々と一体どこから湧いて出てくるんだと言いたくなるほど果てしなかったから、おかしくは無い…のか?
まぁいいか。名前は…そうだな。
「戦技…」
そう言っただけで、ボロボロな上に疲れきった身体に力が湧いてくる。力が溢れる。
よし、決めた。
「《潰断》!」
生まれて間もない戦技は、名づけられた事が嬉しいと言わんばかりに、白い尾を引き、輝きながら俺の身体を引っ張り、思った以上の威力を叩き出す。
ガッ、ゴッ、と言った音が響いていた荒野に、それらとは全く別種の、バウッ!という音が辺りに響いた。
威力は先程までとは段違い。明らかに高く上がった身体を捻り、下を見てみると、結界と魔族の領土の境まで果てしなく続いている黒の塊…牛魔獣の群れと、スレイプニルが引く馬車が。
俺の戦技の影響か、ポッカリと穴の空いた箇所が。
ゆっくりと重力に引っ張られ、地面に近づいてくるにつれわかった。あの中心にいた牛魔獣はひしゃげ、周りの数体の牛魔獣も吹き飛ばされたようだ。
そこまでの威力。使用に当たっては気をつけねば。
しかし、今はこれぐらいで丁度いい。
再び剣を構え、戦技を撃つ準備をし始めた。
「《潰だ…》ガッ!」
しかし、牛魔獣達に振り下ろす直前、何かが俺の脇腹を強く叩き、俺の目の前は真っ暗になった。
まだ…死なねぇぞ…!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
233
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる