大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

迎えと再会

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朝のホームルームが終わって、さて迎えに行こうかと思って立ち上がった途端、クアイちゃんがこっちへ走ってくるのが見えた。
「どうした?」
「うえ、えっと…」
…あぁ、わかった。
「どうした?友達を一緒に迎えに行くか?」
どうやら当たりだったらしく、顔を少しだけ上気させながら「はい」、と返事をしてくれた。
「よしわかった。それなら、次の時間まであんまり余裕ないから、さっさと行こうか」
そう言うと、俺とクアイちゃんは小走りで貴賓室へと足を向けた。
………。
……。
…。
金持ちとかってさ。
無駄に変なところに金かけたりするよな。
何が言いたいかってと、貴賓室の扉が無駄に豪華な両開きの扉なんだよ。
俺達の十五号室よりも何倍もすごいってのがまさか扉だけでわかるとは思いもよらなかった。
「さて…よっ!と」
無駄に豪華な扉は、当然のように無駄に重く、無駄に重々しく開いていく。
ゆっくり、ゆっくりと開いていった扉の向こうに、人影が四つ。
クソ広い部屋のド真ん中、それ相応のデカい机がドンと鎮座しており、その机を囲むようにして人影が合計四つ。
扉が開いた事で、四人の注意がこちらに一気に向いた。
赤、白、緑、そして金の頭がいっせいに俺達の方を向く。
金色の髪を伸ばした女の子の目が、驚きをありありと物語っているのがわかる。
その視線の先にあるのは、俺に半ば隠れるようにして立っているクアイちゃんだろう。
ここは敢えて大声を出すか。
「リーザ・ヒラム!」
俺の声が、馬鹿みたいに広い貴賓室の中に響き渡る。
当の本人は、何事か分からないといった風に、硬直している。
「リーザ・ヒラム!」
「ひゃ、ふぁいっ!」
ようやく俺の欲しかった返事が来た。ちょい噛んでるのは仕方ないか。
敢えて先程までとは一転して優しい声を出す。
「初めまして、だな。俺は一班のリーダーを任されているレィア・シィルだ。ようこそ一班へ、歓迎しよう。そしてこっちが…」
半歩後ろに下がって、俺の陰に隠れていたクアイちゃんと会わせる。
「リーザ、久しぶり…」
「クアイ?あんた、受かってたの…?」
恥ずかしいからか、顔を合わせようとしないクアイちゃんと、無理やり合わせようとするリーザの追いかけっこが始まった。
「…残りの三名、クナナ・マタタ、ソラフ・ワズニム、ヤマナクタ・ルールムは四班のメンバーになるだろう!迎えが来るまで、暫く待っていてくれ!」
そう言うと、俺は扉を閉め、リーザに改めて声をかける。
「一年間、よろしく頼むな」
…返事はなかったが、許すとしよう。
久しぶりの友人との再会にしちゃあちょっと大袈裟すぎな気もしないではない、が。
じっくり楽しんでくれ。何となくそう思った。
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