大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

鍵決闘と鎧3

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ユーリアとの戦闘が再開して十数秒。
俺はマキナによって最適化されたこの鎧が如何に凄いか実感させられた。
まず、銀剣を振るのに負担がまるでない。
あぁいや、これでは語弊が生じる言い方になるが…まぁ、俺が銀剣を振っている時に、以前なら不器用に振り回すだけだったものが、黒剣を振る時と同じぐらい不自由無く振れるようになったと思ってくれるといい。
その癖、威力は大体黒剣装備時の戦技アーツとほぼ同格。
ユーリアからしたら突然剣戟が重くなっているようなものだから、堪ったものじゃないだろう。
ここまでが、俺がマキナに期待していた鎧の性能だ。
だが、マキナはさらに鎧に髪による強化を施し、全体の底上げを。
さらにさらに銀剣だけではなく、踏み込みや相手の剣や打撃による衝撃すらも銀剣を振る、という動作に転用。
発生したエネルギーを鎧の中で循環させ、溜め込み、必要になれば銀剣に上乗せの上乗せをして叩き込むということすらしてみせた。
正直予想外といったどころの話ではない。
ベルは力不足で基礎的な事しか強化できなかったと悔いていたが──とんでもない。
その結果が今ここまで噛み合っているのだから、あいつには頭が上がらないな。
そしてだからこそ。
未だに抵抗し続けるユーリアに衝撃を隠せなかった。
否。
戦技アーツ……《スラッシュ・アクセル》!」
ユーリアの右手に握る剣が青く光り輝く。
次の瞬間、身体を斜めに倒しつつ凄まじ勢いで袈裟斬りに一撃。
さらにその勢いのまま身体を一回転させ、もう一度同じ軌道を剣が駆ける。
「!」
一撃だと思っていた戦技アーツが二度も撃ち込まれ、攻めの手が一瞬止まる。
その隙を突いてユーリアが攻めに転じようとするが、戦技アーツの硬直が抜ける時間より、俺が立て直す方が早かった。
辛うじて戦況は変わらず、俺が押している。
押してはいる。押してはいるが──押しきれない。
ユーリアが抵抗し続けている、なんてヤワな話じゃない。
それどころか彼女は押し返そうとすらしている。
「……なぁレィア」
「あん?」
ついには喋る余裕まででてきたユーリアに、つい返事を返してしまう。
「ずっと気になっていたんだが…キミの得意な戦技アーツはどこへ行った?」
「あぁ、あれか?実はかくかくしかじかでほとんど使えなくなっちまってな」
「おいおい…それ、今言っていい話だったのか?レィアって実は馬鹿だろう」
「聞かれたんだから答えたんだぞ?答えたのに馬鹿呼ばわりはヒデェな。まぁ、否定はしないんだが──なッ!」
俺のつま先がにゅんと伸び、ムチのようにユーリアの足を掴んで倒しにかかる。
しかしユーリアは転んだ瞬間に身体をさらに回転させ、しゃがんだ状態で着地。
いや、それどころか右の剣を担いだ上で──身体が赤い燐光に包まれた。
「げ」
戦技アーツ…」
「させっかよ!」
即座にユーリアの脇腹に蹴りを叩き込むが、感覚的に恐らく防がれたな。剣を間に割り込まされたか。
それでも戦技アーツは不発。俺の蹴りで、結果的にやや距離をとる事になったユーリアは即座に俺へと手向けた。
緋眼で見ると、かなりの量の魔力が集まっている。
『構わん突っ込め!あの程度なら弾け──』
そして高らかにこう叫んだのだ。
「グラヴィティ!!」
「『しまっ!?』」
直後、俺の身体を押しつぶす重圧がのしかかった。
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