大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,168 / 2,022
本編

鍵決闘と鎧2

しおりを挟む
変化は一瞬、そして周りには分からないような僅かな差。
『形状変化・完了。これより全力を以て・マスターを支援します』
「「ッ!!」」
踏み込みから流れるような逆袈裟斬り。
それを避ける為に後ろへステップ。
「っ、お?」
その際、思ったより遠くに飛べた。そのため、少し余裕が出来た。
ユーリアが第二撃へと移る前の僅かな時間で軽くトントン、とその場でジャンプ。
「余裕だな!」
それが癪に障ったのだろう、語気を荒くしてユーリアが追撃にかかった。
「ん?あぁ。余裕っていうか──」
この感覚は…あぁ。
「調子が戻ったって感じだな」
ガギィン!!と。
真正面からユーリアの剣と俺の銀剣がぶつかる。
「!」
「流石に一撃じゃ弾けないな」
鍔迫り合いはしない。
即座に剣を流し、逆の手が握る銀剣をさらにもう一度ユーリアに振り下ろす。
「くっ!」
流石に不味いと判断したユーリアが一度距離を取る。
「ふーん?」
右手で軽く銀剣をくるくると回してみる。さらに指だけで回す。
「ふーむ」
次いで、前にステップ。即座に後ろにステップで同じ位置に。
「ほーう?」
最後に、手を上に伸ばしながら左右に脇腹を伸ばすように一、二、一、二。
「なるほど」
「何やってるんだ…?」
突如奇怪な動きをし始めた俺の行動に困惑したユーリアが思わずそう言う。
が、俺はそれを無視。
「おいマキナ、俺の髪を仕込んだな?」
『はい。マスターの髪の・約三割を利用させて頂きました』
「やっぱりか」
身体を動かした時、鎧の中に俺の髪が混ぜられているのがすぐに分かった。
まぁ、混ぜられていると言ったが、実際は織り込んであると言うような形に近いだろうが。
その為、部位ごとに偏りがある程度あるものの、全体的に身体が強化されている。じゃなきゃ銀剣を片手でペン回しみたいに回せるか。
「次から一応確認を取るように」
『了解しました。申し訳ありません。直前の型に・変更しますか』
「いらん。デメリットも大したものじゃないしな」
髪が三割使われているという事は、もちろん髪を使ったアクションは全体的に性能が落ちる。それだけではなく、杭打機のような髪を使った武装も威力がある程度落ちるだろう。
しかしまぁ、マキナが俺に許可も取らずにやったということは、最低限これぐらいは要ると判断したのだろう。
そういや、声もくぐもったりしてない。地味に嬉しいな。
「おーい?レィアー?もういいか?」
「ん?あぁ悪い、別にいつ来ても良かったんだがな」
「いや、いいさ。私も丁度用意が終わったところだしな」
カツン、とユーリアが踵を鳴らして、どこからともなくもう一振の剣を出す。
「そちらからどうぞ」
「んじゃあ遠慮なく」
新しい鎧の様子は何となくわかった。
あとは全力を試すだけだ。
しおりを挟む

処理中です...