大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

司会と開幕

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訓練所に入った瞬間、聞いたことのあるキンキン声が何かしらの魔導具で拡大された状態で響き渡った。
紳士淑女諸君レディース&ジェントルメン!!久しぶりィ!元気してた?みんなご存知の…おっと、そうだった!十五人の新入生は初めまして!入学おめでとう!私はアイクスナール・キュリー!けどそんなことはどうでもいい!面倒な事もまどろっこしい事もいらない!》
「アイクスナール・キュリーって…去年のあのやかましいあいつか」
声の発生源の方を見ると、大きな壇上に変な帽子を被ったいつもの人影が。
アイクスナールはさらに言葉を重ねる。
《なぁ、
休みの間に力を蓄えた古強者達も、この学校へ入学するために牙を研いできた若獅子達も、試したくはないか?
今年の新入生がどのぐらいのものか。
この学校で育った学生がどれほどのものか。
己が得物を手に、上下の関係もクソもなく、思いっきり正面からぶつかりたくないか?
あぁいい、答える必要は無いさ。
顔を見れば、眼を見ればよくわかる。そうじゃなきゃつとまらない。
さぁ、さぁさぁさぁ!在学生はお馴染みの!新入生には初めての!鍵戦争を始めようじゃあないか!
今年の鍵持ちはこの六人!》
そう言ってアイクスナールは、去年と同じように部屋の番号を読み上げた。
《今の部屋鍵を持ってる奴らは壇上に!》
んー?あっれぇ…?おかしいな、多少は練習出来るって聞いてたんだが、この流れだともうすぐ足首コースだぞ。
とは言え拒否は出来ない。
壇上にアーネと共に立つと、アイクスナールが口を開く。
《この六人!この六人の顔をよく覚えてくれ!…覚えたな?こいつらが現段階で上から五つ分、いい部屋をの鍵を取ってるヤツらだ!
え?なんで六人いるかって?そりゃある一部屋は二人部屋だからな!具体的に言うなら十五号室!通称恋人部屋、あるいは薔薇か百合の花が咲くかぐわしい花園!欲しいヤツらはタッグ組んで挑めよ!じゃないと色んな意味で面白くないからな!
…さて、ルール説明は事前に終わってるな?ウォーミングアップも終わってる?救助部隊も準備は万端?フィールドもスタンバイ完了した?…オーケー、それじゃあ楽しい楽しい鍵戦争、開幕だッッッ!!》
アイクスナールがそう言った直後、一斉に人が押し寄せてくる。
「アーネ!こっちだ!」
「えっ、ちょっと!?」
そう来るだろうと思っていた俺は、ぼさっと突っ立っていたアーネの手を掴んで素早くその場から離れる。
すぐに目についた一回り大きなフィールドに滑り込み、滑るようにしてブレーキをかけながら後ろを向く。
「大丈夫か?アーネ」
「あ、貴方に握られた手首が千切れそうに痛かったですわ!」
「そりゃすまんかった。今度から気をつける」
『ま、今度は手首じゃなくて手を握ってやることだな』
そっちの方が痛くなさそうだしな。
『あぁいや、そうじゃなくてな…』
?、まぁいい。
さて。
「十五号室のデカいベッドと広い部屋、キッチンと風呂までついてる贅沢な部屋の鍵が欲しい奴は入って来い。だけど容赦はしねぇからな?」
そう言って腰のマキナを一度拳で叩く。
瞬間、俺の身体を覆うのは銀の鎧。
そして鎧が全身を包み込む頃には俺の手に握られていたのは銀の双剣。
『準備はいいか?アーネ』
「とっくの昔に、ですわ」
振り返ると、アーネの周りには魔法のなりそこないの炎が火花のように散っていた。やる気は充分以上のようだ。
『戦闘準備完了、ボコられたい奴からかかって来い』
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