大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

昼間と現状

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帰還組は、休む間もなくすぐに授業に引きずり込まれた。
けど、午前中だけで、午後の戦闘訓練は流された。
四班の人達は人数が足りないからと、一班のメンバーは、俺はまだ完治してないから見学、ラウクムくんはどうも食べすぎたらしく休み、クアイちゃんは精神ダメージで何日か様子見、アーネは魔法がなんだか安定してないらしい。
俺とラウクムくんは明日にでも復帰出来るが、問題はアーネとクアイちゃん。
アーネの魔法が安定しないのは、実は原因が俺にあったりする。
と言うのも、つい先日の魔力供給の魔法が中途半端に成功したから。
魔力というのは、個人個人で特色というか、癖というかがあるらしい。
で、先生の使った魔法は、魔力を供給する、という効果と魔力を癖のない素の状態にする効果があったらしい。
けど、この効果の内の後者、癖をなくす方の効果がダメになった状態で供給を行ったため、今現在、アーネの魔力は本人の魔力と俺の体外に出ようとしない魔力が混ざり合い、非常に不安定になってるらしい。
どのぐらい不安定かと言うと、魔法を撃とうとすると、最大火力か最弱火力しか出ないとか。
アーネ曰く、細かい威力を決められていたのが、急にスイッチでオンかオフしかなくなった感覚らしい。
そんな爆弾みたいな魔法使いは危険すぎるので、しばらく安静にして、魔力を整えている。
クアイちゃんは…まぁ、そのままだ。
けど、職員室の前を通った時に聞こえた声が、三日以内に治らなかったら自宅に帰す、とかなんとか。
かなり短いけど、それまでになんとかしてあげたい…が。
正直、俺にはなにも出来ないのが現状だ。
身近な人が死んだと言うのなら俺もだが、負ったダメージが段違いだ。
なんというか…俺の考えとしては、死んだものはどうにもならないし、どうしようとも思わない。
一時的なダメージは大きいが、すぐにおさまる。そんな感じ。
それに、ナナキの記憶も、剣も遺されている。
けど、クアイちゃんは全く違う考えのようだ。
例えば酷いが、物に愛着や執着があるタイプなんだろう。
それに、俺と違って遺された物もないし。
正直、立ち直ったところで、ここから先は戦い続けなければならないし、ゆっくりとだが、確実に『南下』の日にちは近づいている。
仮に乗り越えたり、忘れることが出来たとしても、この時に魔族と遭遇、パニックとかになられたらたまったもんじゃない。
冷たいかもしれないが、俺が何か言っても、まだマシな奴に何言われたって腹が立つだけだ。
例えるなら、自分が三十点のテストをとって嘆いている所に、アーネが来て、『私も酷かったですわ…え?六十点ですわ…』とかって言うのと同じ。
だから俺は何も出来ない。
これは、クアイちゃん一人の問題だから。
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