大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

真相と鎖

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「おい、いい加減なこと言うなよ。俺はあの魔族を」
「いい加減なことではありませんわ!」
アーネの声が弱々しく、けれど激しく響いた。
「貴女、自分が何をしたのか知らないのですか?」
まて、ナナキの記憶を探すが…魔族と戦い始めたあたりから記憶がかなり曖昧だ。
ただ、一つ言えることとして…魔族は一切殴ってなどいなかった。
ずっと、身体強化と例の剣の魔法のみ、だ。
「まて、そうだ、きっとその後にアイツは力尽きたナナキを殴ったんだ!そうに違いない!」
認められない。認めない。…認めたく、ない。
「違いますわ。私が見たこと、その全てを貴女に教えます」
「違わない!アイツがナナキを!」
「一度、話を聞きなさい!」
パニックを起こしかけていた自分を一喝。腹の底から吐き出された声は、弱々しくとも、自分を目覚めさせた。
「…すまない」
しかし、それには目もくれず、起こしていた身体を再び寝かせ、アーネは語り出した。
「私が来た時、貴女は魔族に敗れ、魔人が貴女へ迫っていっていました。その時、貴女が九二声にならない叫び声を上げ、仰け反りましたわ。その途端、貴女に纏わりついていた黒い澱みのようなものがはじけ飛びました。ここまでで何か記憶にありますの?」
「…」
緩やかに首を横に振る。
そうだ、たしか魔族に…呪術だったか?そんなもんをかけられたんだったな。
なら、黒い澱みってのは多分それか。それが…弾けとんだ?
「なら、続けます。その途端、貴女の身体中から赤い霧のようなものが溢れ、背中を支点にして集まり、赤い、太い鎖のようなものが数本…いえ、十本は無かったはずですわ。とにかく、そんなものが一気に飛び出し、魔人に一気に殺到し、そのまま突き刺さりましたの。鎖は突き刺さって魔人をズタボロにした後、追撃をしようとしたところで、魔人は結界の外へ逃げましたの。そして、貴女の鎖は消えた魔族を探すように、見つからない苛立ちを周りにぶつける様に辺りを薙ぎ、砕きましたの。その時に…ナナキさんが…」
「そうか。わかった…」
そこだけ記憶が完全にない。ナナキも知らなかったのか、それとも敢えて自分に気づかないように隠したのか…それはわからない。
「俺が…殺した」
愛しい人を。好きだと、愛していると言ってくれた彼女を。
「私は慌てて離れましたが、すぐに収まり、貴女とナナキさんに回復魔法を『圧縮』を使って施そうとした所で、倒れましたの。その次の記憶は貴女とのディープキスですわ」
最後に茶化すように言ったが、アーネが言ってくれた事は俺の心にザックリと突き刺さった。
おそらく、英雄が来なければ、まだずっとそうしていただろう。
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