大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

天井と英雄様

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目が覚めると、天井が。視界に入る自分の身体は、布団で覆われていて、もう少し寝れそう…。
じゃなくて!
見たことのない天井。…テントか?テントって言ったら…あぁ、四班のテントかな?
よし、状況把握するために一旦起き…。
…身体が動かん。
しかも、ついさっきまでの記憶が曖昧だときた。
えーと、記憶があるのは…。
ああそうか、連戦技アーツ・コネクト使ったのは覚えてる。
で?そのまま気を失ったんだっけか。
まぁ、万全体調なだった訳ではないから、倒れてもおかしくはない…おかしくは無いけど、なんかモヤモヤが残るな。
「あ……あー」
声は出る、と。
うーん、自分の体調としては、身体中を包むような倦怠感と、それと同じぐらいの痛み…こう、タワシを使って全力で身体中を痛いように擦るような…ああ、単にメチャクチャ痛いって話だ。
それぐらいか。
連戦技アーツ・コネクトの関係で怠いのはわからんでもない…恐らく、明日は起きたら筋肉痛確定だな。
逆にわからんのは、身体中の痛みの方か。
全力で転んだ訳でもない。…んだろうが。
いや、記憶が曖昧だから断言は出来ねぇんだよな。
「おーい、誰かー?誰かいるかー?」
喉が乾いた。
パサリ、という音がして、誰かがテントの中に入ってきた。
「!!」
『ソレ』を見た瞬間、脳が、或いは身体が拒絶を起こした。
理由は二つ。
一つ、何故かテントに入ってきたのが、『英雄様』だったから。何故、どうして、などという事は全く考えず、先に謎の嫌悪感が込み上げてくる。
そしてもう一つ、英雄が入って来ると同時に、自分の目が何色とも形容し難い独特の色をしたモヤのようなものが目に映ったから。
一つ目はまだわかる。自分は英雄という英雄を毛嫌いしているからだ。
理由は特にない。イメージとして、ほぼ全ての人がゴキブリを無条件で嫌いなのとかなり近いと思う。
もっとも、こんなデカくて手強いゴキブリなんざ見たこともねぇがな。
だが、二つ目…モヤはさっぱりわからん。初めて見たわ。
モヤは英雄の中にグラグラと沸騰したお湯のように溜まっている。今にも爆発しそうだ。
これじゃあお湯じゃなくてマグマか。
「…はじめまして。五英雄と呼ばれる地位についてる、サナ・ファルナです。何用でしょうか」
無表情で告げる英雄。ちなみにこの英雄は、金髪碧眼の女。少しキツめの目元だとかがあるが、普通に美形の部類に入るだろう。まぁ、英雄ってだけで自分は嫌い。あと、着ているものはヘルムだけ外したフルプレート。
余談だが、聖女様と英雄は、顔を隠すモノの類を一切つけない。
理由として、この顔で味方を鼓舞するだとか、顔に飛んでくる攻撃は避けた方が手っ取り早いから、つける意味がそもそもないとか、その辺り。
「何も用が無いなら、呼ばないでください」
そう言って出ていこうとする英雄様。
「あぁいや、待ってくれ!」
急いで引き止める。すると、すぐに戻ってくれた。
「では、要件を」
喉の乾きとかは全部吹き飛んだ。それどころじゃない。
とりあえず…。
「状況説明を頼む。あと、みんなはどこだ?」
そんな事を訊くと、英雄様は品定めでもする様に、少し目を細めながら答えてくれた。
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